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『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』アメリカの「正義」と「力」に迫るポリティカルアクション ※注!ネタバレ含みます

(C) 2025 MARVEL.

『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』アメリカの「正義」と「力」に迫るポリティカルアクション ※注!ネタバレ含みます

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バック・トゥ・『ウィンター・ソルジャー』



 インド洋に巨大な島が出現して以来、世界は謎の鉱物資源・アダマンチウムに興味を示していた。採掘されたアダマンチウムの一部は、日本へ輸送する途中で謎の組織に強奪されたが、キャプテン・アメリカ/サム・ウィルソンとファルコン/ホアキン・トレスの活躍で奪還。アメリカ大統領サディアス・ロスは、軍人時代の過激なイメージを脱却するため、また自らの成果をアピールするため、アダマンチウムの精製と流通に関する条約の締結を急いでいた。


 ところが、各国の要人をホワイトハウスに招いて開催された「セレスティアル島 世界サミット」で事件は起こる。来賓のイザイア・ブラッドリーがセキュリティの銃を奪い、演説中のサディアスに発砲したのだ。ところが、逮捕されたイザイアは犯行直前からの記憶がないと語る。何かが水面下で起きていると確信したサムは捜査への参加を申し出るが、間一髪で難を逃れたサディアスは、容疑者の友人であるサムをチームから外すことを決定して……。


 ハリソン・フォード演じるサディアス大統領が登場するファーストカットから、まさにノンストップの陰謀サスペンスだ。サムはイザイアの無罪を証明するため、事件の背後にいる黒幕を追いかけて動きはじめる。かたやサディアスは、以前は「ハルクハンター」と呼ばれた傍若無人な男で、『シビル・ウォー』ではスティーブやサムを投獄した過去を持つが、今では「自分は変わった」と主張する男だ。しかし、その過去を知る人々はサディアスを信頼していない。


 映画の序盤は、さすがに膨大な過去作の振り返りと基本設定の紹介に追われるため、大量の説明台詞にスパイスとしてのユーモアを交えたような格好になっている。なにしろ本作独自のストーリーを語るには、キャプテン・アメリカやサム・ウィルソンの歴史だけでなく、『インクレディブル・ハルク』(08)や『エターナルズ』(21)にも言及しなければならないのだから一苦労だ。



『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』(C) 2025 MARVEL.


 監督のジュリアス・オナーと、彼が率いる5人の脚本家チームは2つの戦略を採った。ひとつはハイテンポな展開と編集による語り口で、とにかく映画を前へ前へと転がしていくこと(ローラ・カープマンの音楽はすこぶる効果的だ)。もうひとつは「MCU最高傑作」とも名高い『ウィンター・ソルジャー』と、映画史に残るポリティカル・スリラーの参照である。


 特に映画の前半において、本作は『ウィンター・ソルジャー』のプロットを丁寧に踏襲する。冒頭、サムとホアキンがメキシコの任務で鉱物を取り戻し、人質を救出するくだりは、展開といい、アクションのトーンといい、『ウィンター・ソルジャー』の船舶シーンの意識的な反復だ。スティーブは政府に追われる身として、サムは大統領から切り捨てられて、組織に頼らず事件を調査しはじめるのも同じ。その過程でどんな場所にたどり着き、どんな人物に出会うのかも……これ以上は本編を観てのお楽しみにしておこう。


 ストーリーは60~70年代風のポリティカル・スリラー仕立てで、「朝鮮戦争下の軍人が洗脳されて凶行に及ぶ」というコンセプトは『影なき狙撃者』(62)の直接的引用。オナー監督は『ウィンター・ソルジャー』でも参照された名作『パララックス・ビュー』(74)や、大統領暗殺を狙う殺し屋と警察の攻防を描いた『ジャッカルの日』(73)のほか、『殺しの分け前/ポイント・ブランク』(67)、『サムライ』(67)にも影響を受けたという。


 ただし、本作はあくまでもキャプテン・アメリカの物語だ。『ウィンター・ソルジャー』がそうであったように、陰謀の黒幕が姿を現したとき、映画はキャプテン・アメリカ(今回はサム・ウィルソンだ)の正義と力の本質に接近してゆく。彼の名前は「キャプテン・アメリカ」。もちろん、その正義と力は国家そのものに深く結びついている。




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