2021.03.18
『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』あらすじ
第二次世界大戦の英雄、”キャプテン・アメリカ”ことスティーブ・ロジャースは約70年の眠りから目を覚まし、アベンジャーズの一人としてのニューヨークでの戦いを経ながらも、現代社会への適応に苦労していた。その後、彼は国際平和維持組織、”S.H.I.E.L.D."の一員として、”ブラック・ウィドウ”ことナターシャ・ロマノフと共に任務に就くことになるが、準軌道飛行によりテロリストを先制攻撃する、S.H.I.E.L.D.の「インサイト計画」の存在を知ってしまう。「人類に対する監視だ」と不審に思ったスティーブだったが、突如、”ウィンター・ソルジャー”と呼ばれる暗殺者、そして仲間であるはずのS.H.I.E.L.D.の特殊部隊から襲撃を受けてしまう..。
Index
- 「マーベル最大の転換点」その意味とは
- キャプテン・アメリカというヒーローの虚無
- 70年代政治スリラーから着想された〈現代の不安〉
- 複雑化した〈正義〉とロバート・レッドフォード
- 3人の「ウィンター・ソルジャー」
- 「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」への歩み
- 映画作家としてのアンソニー&ジョー・ルッソ
「マーベル最大の転換点」その意味とは
『アイアンマン』(08)から始まった、米マーベル・エンターテイメントの映画部門「マーベル・スタジオ」が手がけてきたマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の映画作品。コロナ禍のために当初の計画に狂いは生じたものの、マーベルはディズニーの映像配信サービス「ディズニープラス(Disney+)」にてドラマシリーズの製作・配信もスタートさせた。2021年の初頭から話題を呼んだ『ワンダヴィジョン』はその第1弾。ひとつの集大成となった超大作『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19)を経て、MCUは新たな境地に足を踏み入れつつあるのである。
『ワンダヴィジョン』に続くドラマシリーズの第2弾が、2021年3月19日(金)より配信された『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』だ。題名の通り、ファルコン/サム・ウィルソン(アンソニー・マッキー)とウィンター・ソルジャー/バッキー・バーンズ(セバスチャン・スタン)を主人公に据えたアクション作品である。この二人が初めて顔を合わせたのが、映画『キャプテン・アメリカ』シリーズの第2作『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(14)。MCUの歴史を大きく変えた一作だ。
『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』予告
シリーズの第1作『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(11)は、アメリカを象徴するヒーロー、キャプテン・アメリカの誕生と第二次世界大戦における活躍を描いた“戦争映画風”のライトなアクション映画。監督は『ジュマンジ』(95)や『遠い空の向こうに』(99)のジョー・ジョンストンが務め、国家のプロパガンダに利用されたというキャラクターのダークなオリジンを踏まえつつも、自らの作風を活かして、家族で楽しめるファンタジックなキャプテン・アメリカの誕生譚に仕上げてみせた。
もっともマーベル・スタジオのケヴィン・ファイギ社長には、シリーズの続編を作るにあたり、当初から「スーパーヒーロー映画と1970年代の政治スリラーを融合させる」というアイデアがあったという。このアプローチが功を奏したことから、“ヒーロー映画”という枠組みに別のジャンルを掛け合わせるアプローチは加速の一途をたどった。強盗コメディ『アントマン』(15)、90年代風サイコ・スリラー『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(16)、怪奇映画テイストの『ドクター・ストレンジ』(16)、懐かしさあふれる青春映画『スパイダーマン:ホームカミング』(17)、国家存亡を賭したスパイ映画『ブラックパンサー』(18)など、例を挙げ始めればきりがない。前出の『ワンダヴィジョン』に至っては、「シットコム」というジャンルを作品の中核にそのまま組み込んでさえいる。
そんな『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』の監督に起用されたのが、これが大作初挑戦となったアンソニー&ジョー・ルッソ。シリーズ第3作『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』の監督を経て、MCUの節目となった『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(18)『アベンジャーズ/エンドゲーム』でも監督を任されたキーパーソンの兄弟が、この作品で堂々の初参加を果たしたのだ。
こうした側面を踏まえてみれば、筆者が本作を「マーベル最大の転換点」と呼んではばからないこともご理解いただけることだろう。『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』のスタートを控えた今、この作品を「政治・映画・MCU」という切り口を横断しながら、じっくりと紐解き直してみたい。