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『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』マーベル最大の転換点を「政治・映画・MCU」で再解読する

(c)Photofest / Getty Images

『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』マーベル最大の転換点を「政治・映画・MCU」で再解読する

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「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」への歩み



 『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』は、言うまでもなく『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』に繋がる物語の“始まり”である。『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』を序章として、バッキーがウィンター・ソルジャーとなり、スティーブがサムと出会ったことから、彼らの物語は動き出すのだ。ルッソ兄弟はサムとバッキーの組み合わせにも注目し、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』では二人のアクションとユーモアをフィーチャー。『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』『アベンジャーズ/エンドゲーム』ではスティーブを含めた三者の関係性をさらに深めた。


 ルッソ兄弟による4作品は緊密に繋がっており、たとえば本作の場合、回想シーンでバッキーがスティーブに言った「最後までとことん付き合うよ」という言葉は文字通り“最後まで”二人のキーワードとなる。とりわけ『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』に顕著だが、スティーブ本人の人生の痕跡が消えかかった現代において、スティーブはバッキーを自身のアイデンティティを担保する存在のようにさえ扱うのだ。また『アベンジャーズ/エンドゲーム』では、サムの「左から失礼」という言葉や、重傷を負ったフューリーがスティーブの部屋を訪れているシーンの音楽なども改めて登場している。すべてが最初から計画されていたわけではなかっただろうが、キャプテン・アメリカをめぐる物語が緻密に構築されたことは確かだ。


『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』予告


 そんなルッソ兄弟の蒔いた種は、来たる『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』にも引き継がれる。『アベンジャーズ/エンドゲーム』後の世界を舞台に、サムとバッキーが新たな任務に挑む物語には、エージェント13/シャロン(エミリー・ヴァンキャンプ)や『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』のジモ大佐(ダニエル・ブリュール)らが再登場。また予告映像では、『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』でスティーブがS.H.I.E.L.D.の職員に呼びかけた言葉を引用して、サムが「親友に言われたことがある。“自由の代償は高い”って。これからもそうだ」と語る。同じく本作のラストシーンで、消えたバッキーを探すことを決意したスティーブにサムが言った「いつ始める?」というセリフも再び聞くことができるのだ。


『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』予告


 ファルコン役のアンソニー・マッキーは、『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』を「ヒーロー映画のイメージを永遠に変えた作品」と評している。「最初はマーベル版『ジェイソン・ボーン』みたいなアクションのスパイ映画。それが変化して、特別なテーマのある、今の世界に通じるリアルな作品になる」。またウィンター・ソルジャー役のセバスチャン・スタンは、そんな本作のトーンが『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』に継承されることを早くから認めていた。その上でマーベルらしいアクションをたっぷり詰め込み、さらにキャラクターを深く掘り下げる作品になるというのだ。


 ケヴィン・ファイギ社長は、サム・ウィルソンがスーパーパワーを持たない人間であるところに着目。アフリカ系アメリカ人であること、帰還兵であり元兵士のケアをしていた人物であることを踏まえ、ドラマではキャラクターの背景とともに「今の世界で黒人が後継者になることの意味」を描くと述べている。『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』と同じく、現在の時代精神を取り込んだ作品になることは間違いないだろう。かたやバッキーは、現代を生きる孤独や、自己の内面に向き合うことになるようだが……。


 ちなみに『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』には、一連の物語を紡いだアンソニー&ジョー・ルッソ監督と、脚本家のクリストファー・マルクス&スティーブン・マクフィーリーは関与していない。監督はテレビドラマ界の名匠カリ・スコグランド、脚本家は「Empire 成功の代償」などの気鋭マルコム・スペルマンと『ジョン・ウィック』シリーズのデレク・コルスタッド。新たな顔ぶれがどんな深みを与えるのかも見どころとなる。




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