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時を重ね存在意義を増す『トゥモロー・ワールド』式のリアルな未来

時を重ね存在意義を増す『トゥモロー・ワールド』式のリアルな未来

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年月を経るごとに重要性を増すSF映画の金字塔



 この映画のことを思うと、いまだ胸が苦しくなる。その切実なストーリー展開はむせかえるほどの生々しさに満ち、やがて訪れるかもしれない暗雲たる未来の”予見”としても本作は十分に説得力を持ち得ていた。


 これほど透徹した視線で衝撃を与えた傑作にもかかわらず、公開当時(2006年)は興行的に全く振るわず(それもまた胸の苦しみを強める一因だ)。その年のアカデミー賞では、脚色、編集、撮影部門にノミネーションを果たす程度にとどまった。


 だが、今こうして振り返ってみるとどうだろう。『トゥモロー・ワールド』は物語の舞台である2027年へのカウントダウンが進むにつれ、ますます重要性が増しているようだ。その証拠に、BBC(参照:1)が2016年、177人の映画評論家を対象に21世紀の最も優れた映画はどれかを尋ねてランキング化したところ、同作は13/100位につける健闘ぶりを見せつけている。




 同作の描く2027年の未来では、人類の生殖能力が失われ、もう18年ばかり新たな生命が誕生していない。すでに世界の多くの国々はテロ、戦争、飢餓、環境汚染などで壊滅的なダメージを受けているらしいが(具体的な言及はなされない)、唯一英国は8年にわたって国境を閉鎖し、かろうじて秩序を保ちながら奮闘中。難民たちは生存をかけてこの地への侵入を試み、拘束された者たちはゲットーのような収容エリアで強制送還を待つ日々を送っている。


 映画サイト「Vulture」(参照:2)によると、この映画化の企画がアルフォンソ・キュアロン監督のもとに転がり込んできたのは2001年のこと。いかに可能性を膨らませるべきか考えあぐねていたところ、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロが起こる。ちょうどその時、キュアロンはトロント映画祭で自らの監督作『天国の口、終りの楽園。』(01)を上映すべく現地入りしていたが、テロの混乱によって帰りの便のフライトがキャンセルに。数日間の足止めを食らう中、同伴した俳優のガルシア・ガルシア・ベルナルらと言葉をかわし、これからどのような時代が待ち受けているのか、様々な思考を巡らしたという。そこから自ずと、『トゥモロー・ワールド』を前に進めてみたいというモチベーションに火がつき始めたのだ。



 構想期間は思いのほか長期に及んだ。一度は『ハリー・ポッターとアズガバンの囚人』(04)のために離脱したキュアロンだが、ハリー・ポッター撮影時のロンドンでの暮らしは、彼により深く『トゥモロー・ワールド』のことを考える機会を与えた。街を知り、人と話し、写真を撮り、関連書籍も数多く読み漁り、こうやって士気は一気に高まり、知識や情報も十分な状態に。そして2005年、ようやくスタジオ側の首脳陣も首を縦に振り、『トゥモロー・ワールド』の製作に本格的なゴーサインが出されることとなる。



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