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SF、バディムービー、アクション、コメディ、80年代特有のごった煮感をスマートに昇華させた『インナースペース』

SF、バディムービー、アクション、コメディ、80年代特有のごった煮感をスマートに昇華させた『インナースペース』


変則的に描かれた「遭遇」、そしてバディ・ムービー



 こうやってスピルバーグの文脈で見つめてみると、なるほどこの映画にもおなじみの「遭遇」というテーマ性が見え隠れする。それも今回は「縮小されて体内に入り込んだ人間」と「その体の持ち主」という複雑極まりない間柄の二人が「遭遇」を果たすのだ。このドタバタ極まりない設定を見事に成立させてしまうところにも、スピルバーグらしさが光るわけだが、一方でスピルバーグには到底真似できない素っ頓狂さを持つジョー・ダンテの演出も、素材の魅力を十二分に引き立てた。


 さらに面白いのは、この映画が単なるSFコメディの域をはみ出し、「変則的バディ・ムービー」として体をなしていく過程だろう。身体をミニチュアライズされたパイロットのタック(デニス・クエイド)と、思いがけずこのドタバタに巻き込まれてしまう気弱なジャック(マーティン・ショート)。二人は性格も体格もまるで違う。だがそんな彼らが一心同体となることで、不思議な現象が生まれてくる。タックは潜入した体内の聴覚神経と視神経に接続することでジャックが見たもの、聞いたものを自らのことのように把握できるようになり、なおかつジャックとの会話や意思疎通も可能に。


 弱気で自分の殻を打ち破れないジャックに対して、その内側からタックはマッチョな叱咤激励を次々と投げかけていく。一方、どこか快楽に溺れがちで自暴自棄なタックに対しては、少年のような優しさと無邪気さを持ったジャックが懸命にフォローを返していく。最初は戸惑うばかりだった彼らは次第に心を打ち解けあうようになり、お互いの弱点を補い合いながらピンチを乗り越えていくのである。


 さらにデニス・クエイドとマーティン・ショートという役者同士の絆もまた大きな化学変化をもたらした。映画を見てもらえば分かるが、「サイズ」と「現在地」が大きく異なる彼らが同一フレームに収まる共演シーンはほとんどない。にもかかわらず、彼らは(自分が映らないことは承知で)相手の撮影に付き添い、その場でセリフを生であて合いながら演技を重ねたのだ。


 相手のセリフは高性能の小型イヤフォンを通じて耳元で聞こえ、それに反応する形で単なる一人芝居に陥らないリアルな演技が引き出されていく。こういった応酬を通じて、二人のコンビネーションは徐々にホンモノとなっていき、バディ・ムービーとしての魅力が大きく開花していったのである。



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