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『パルテノペ ナポリの宝石』パオロ・ソレンティーノがフェリーニ印を散りばめ描いた、ナポリという街

©2024 The Apartment Srl - Numero 10 Srl - Pathé Films - Piperfilm Srl

『パルテノペ ナポリの宝石』パオロ・ソレンティーノがフェリーニ印を散りばめ描いた、ナポリという街

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※本記事は物語の核心に触れているため、映画未見の方はご注意ください。



『パルテノペ ナポリの宝石』あらすじ

1950年、南イタリア・ナポリで生まれた赤ん坊は、人魚の名でナポリの街を意味する“パルテノペ”と名付けられた。美しく聡明なパルテノペは、兄・ライモンドと深い絆で結ばれていた。年齢と出会いを重ねるにつれ、美しく変貌を遂げてゆくパルテノペ。だが彼女の輝きが増すほど、対照的に兄の孤独は暴かれていく。そしてあの夏、兄は自ら死を選んだ…。彼女に幸せをもたらしていた<美>が、愛する人々に悲劇を招く刃と変わる。それでも人生を歩み続けるパルテノペが果てなき愛と自由の探求の先に辿り着いたのは――。


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フェリーニ印を散りばめて描くナポリ



 荘厳かつ重厚な映像で退廃美と詩情の間で遊ぶ、現代イタリア映画の鬼才、パオロ・ソレンティーノ監督。『The Hand of God』(21)では、風光明媚なナポリを舞台に、自身の青春を幻想的に描いたことが記憶に新しい。しかし、まだナポリの街を描き足りなかったのか、続く大作『パルテノペ ナポリの宝石』(24)では、さらにナポリを深掘りする一作を送り出し、本国イタリアで自身最高の興行収入を記録した。


 「ナポリとは何か?」この茫漠として掴みどころのない疑問を、本作『パルテノペ ナポリの宝石』は再度われわれに投げかける。ここでは、そんな本作が描いたものが何だったのかを、物語の順に沿って解説していきたい。


 本作の製作は、ファッションブランドの「サンローラン」が本格的に映画の製作に乗り出した「サンローラン プロダクション」によるもの。近年、「メゾン マルジェラ」のジョン・ガリアーノが退任前に映画とファッションショーとの融合に挑戦したが、今回の「サンローラン」の試みはさらに映画そのものに踏み込んだ本格的なものであり、ブランドのクリエイティブ・ディレクター、アンソニー・ヴァカレロが衣装のアートディレクションを担当している。



『パルテノペ ナポリの宝石』©2024 The Apartment Srl - Numero 10 Srl - Pathé Films - Piperfilm Srl


 映画はまず、「提督」と呼ばれる、海運業で成功した実業家が、ナポリ湾の上で古い年代の馬車を運搬する姿をとらえる。美しい波の先に広がる港の街並みとの奇妙な組み合わせも壮観な、このバロック様式の馬車は、美術のサヴェリオ・サマリ、メラニア・サントゥッチなどによる、一から生み出された労作で、作品のなかでもアイコニックな存在感を醸し出している。


 巨大なオブジェの運搬といえば、イタリアの巨匠フェデリコ・フェリーニ監督の『甘い生活』(60)の場面を想起させる。ソレンティーノ監督の多くの過去作と同じく、本作もまた、至るところにフェリーニ映画の要素がこれでもかと散りばめられる。今回もまた最初から最後まで「フェリーニ」印だ。逐一指摘していくので、覚悟してもらいたい。





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