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『ボーイ・ミーツ・ガール』パリの夜の再発明、贋物の星々の光に身を投げる

『ボーイ・ミーツ・ガール』パリの夜の再発明、贋物の星々の光に身を投げる

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ミレーユ・ペリエを讃える



 「レオスと私は、シャイヨーで1日に3、4本の映画を観ていました。(中略)しかし、私たちには誰も知り合いがいませんでした。本当に二人きりでした。」(ミレーユ・ペリエ)*1


 『ボーイ・ミーツ・ガール』は、ミレーユ・ペリエを讃えるために撮られた映画といえる。フライパンを持ち、デッド・ケネディーズの「ホリデイ・イン・カンボジア」に合わせて長い髪を振り乱す姿(デッド・ケネディーズのレコードは次作『汚れた血』(86)の部屋にも飾られている)。チェック柄のパンツルック。タップダンスの練習風景。何より白黒画面に映し出される彼女の顔が、特別なイメージとして脳裏に刻まれる。彫刻のように美しいクローズアップ。ミレーユ・ペリエのクローズアップは、劇中にオーバーラップで暗闇に浮かび上がる、仮面のような数々の顔と、不気味な共鳴を引き起こしている。本作のミレーユ・ペリエの演技に衝撃を受けたフィリップ・ガレルは、カイエ・デュ・シネマが企画したレオス・カラックスとの対談に即座に応じている。そして自身の長編『彼女は陽光の下で長い時を過ごした』(85)や、亡きニコに捧げた映画『ギターはもう聞こえない』(91)にミレーユ・ペリエを起用している。未発表に終わったが、ジャン=リュック・ゴダールも彼女を撮影している。



『ボーイ・ミーツ・ガール』4Kレストア版


 ミレーユは“夢見られた娘”だ。アレックスがヘッドフォンをかけ、デヴィッド・ボウイの「僕の夢がかなう時」を聴きながら両手を広げ、彼女を夢想する最高にロマンティックなシーンでさえ、彼はまだミレーユと出会っていない。ミレーユは贋物の星々のように、アレックスの夢想のイメージの彼方にいる。パーティー会場でついに2人が出会ったときでさえ、そこに会話があるとはいえない。そこにあるのはモノローグとモノローグの並置である。発話の際、幕が暗転するように、一人ずつ強い照明が当てられる。クローズアップされる。言葉のキャッチボールはほぼ生まれない。ミレーユ・ペリエによると、「このシーンではお互いを見ないように」と、レオス・カラックスに演出されていたという。それは劇的に孤独を浮かび上がらせ、孤高の映像表現の効果を生んでいる。


 ドニ・ラヴァンという稀代の才能の発見だけでなく、『ボーイ・ミーツ・ガール』は、レオス・カラックスとミレーユ・ペリエという、若く才能に溢れた恋人たちの生活の結晶といえる。知り合いも特にいない世界で、2人は映画館に通い、バルバラのレコードに夢中になっていた。しかしミレーユ・ペリエは、出来上がった映画を見た後、怖くなったという。「この悲しいキャラクターは何だろう?」と。2人は本作の撮影が終わると同時に、別れることになる。


 ミレーユ・ペリエは、本作のプロデューサーの一人であり、映画作家でもあるパトリシア・モラーズをレオス・カラックスに紹介している。そしてもう一人、レオス・カラックスによる「アレックス3部作」の偉業を決定づける、重要なプロデューサーとの出会いがある。アラン・ダアン。シャンタル・アケルマンの歴史的傑作『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』(75)のプロデューサーに名を連ねた人物である。





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