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『エレノアってグレイト。』スカーレット・ヨハンソンが温もりと凛とした魅力たっぷりに紡ぐ、長編監督デビュー作
2026.06.23
常に意見を求めながら共に創り上げる
ベテランのジューン・スキッブの存在感は言うまでもないが、新星エリン・ケリーマン(『28年後…』シリーズなど)の大きく見開いた透き通った瞳、そこに微かに感じられる感情の影が、ことさら我々を惹きつけてやまない。ヨハンソンがこういったフレッシュな才能を見出し、その可能性に太鼓判を押して演出していることが嬉しくなる。
当のケリーマンは、ヨハンソンが完全に役に入り込める環境を整えてくれたことに感謝しているという。そして、監督の考えや手法を押し付けるのではなく、製作の早い段階から役柄について「あなたはどう思う?」と意見を求められたことで「ああ、もうすでに共同作業が始まってるんだな」と感じたそうだ。その上、ヨハンソンはあらゆる過程において「あなた的には満足?」と確認することを欠かさなかった。(*4)
これこそ、俳優としてのヨハンソンが30年以上のキャリアを通じて「そうあるべき」と望む、俳優と監督との理想的な関係性なのだろう。
かつてヨハンソンがレッドフォードの演出術に魅了されたのは前述の通り。それ以外にも彼女は、『アイアンマン』シリーズでお馴染みの監督兼俳優のジョン・ファヴローの手法にも刺激を受けたと語っている(*5)。ファヴローは、自らを「セラピストのようなもの」と語るほどの目線と対応力で、個性や演技アプローチの異なる出演者の言葉をきちんと受けとめ、個々に応じたコミュニケーションによって最高のものを引き出していくそうだ。
レッドフォード、アレン、ファヴロー、バームバック、ノーラン、グレイザー、ルッソ兄弟、アンダーソンなど、これまで共に仕事をした名監督は数知れないが、ヨハンソンはその一人一人から何かしら大切なものを吸収して今ここに立っているのだろう。

『エレノアってグレイト。』(C)2025 ELEANOR INVISIBLE FILM, LLC AND TRISTAR PRODUCTIONS, INC. ALL RIGHTS RESERVED.
許容や赦しを描くということ
そして物語は「一つの嘘」の結末へと行き着く。
彼女がついた嘘は本来なら許されるべき出来事ではないが、しかしこの映画は瞬間的な「情報の切り取り」とは根本的に異なり、あくまでその人の人生や文脈として受け止め、何が彼女にそうさせたのかを深く検証していく。そうやって時間をかけてじっくり丁寧に、線的に見つめていくことこそ映画の役割であり、使命なのだ。
何度でも言うが、本当に優しくて素敵な映画である。そしていつしかコミュニティや関係性において「許容」や「赦し」が生まれていくラストも温かい。互いを理解し、許容し、赦し合うことが難しくなっている現代へ向けた、ヨハンソンをはじめ作り手たちの真摯なメッセージのように感じるのは、私だけではないはずだ。
参考・引用記事
*1
https://deadline.com/2025/05/scarlett-johansson-eleanor-the-great-directing-interview-1236382740/
*2
https://deadline.com/2025/05/scarlett-johansson-eleanor-the-great-directing-interview-1236382740/
*3
*4
*5
https://deadline.com/2025/05/scarlett-johansson-eleanor-the-great-directing-interview-1236382740/
1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンII』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。
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配給:東映ビデオ
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