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『ロングウォーク』資本主義という巨大なルームランナーを歩く少年たち

©2026 Lions Gate Ent. Inc. All Rights Reserved.

『ロングウォーク』資本主義という巨大なルームランナーを歩く少年たち

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『スタンド・バイ・ミー』の暗黒の双子



 キング原作の少年たちを描いたロードムービーといえば、誰もが『スタンド・バイ・ミー』(86)を思い浮かべるだろう。4人の少年たちがひと夏の冒険として死体探しの旅に出るこの物語は、少年期の終わりと成長を描いた普遍的な通過儀礼だった。


 彼らは旅の道中、森の中を走る線路に沿って歩いていく。あの線路はどこまでも続く自由の象徴であり、引き返そうと思えばいつでも降りて日常に帰れるという、選択の余地が担保された道だった。しかし『ロングウォーク』は、その完全なる“暗黒の双子”である。


 本作で少年たちが歩かされるのは、無機質なアスファルトの国道だ。横に広いシネマスコープの画面には広大なアメリカの風景が広がるが、彼らには道から外れる自由など1ミリもない。一歩でも外れれば即座に射殺される。それは自由な道どころか、見えない壁に囲まれた逃げ場なき処刑場なのだ。



『ロングウォーク』©2026 Lions Gate Ent. Inc. All Rights Reserved.


 絶望的なのは、彼らが死体を探しに行くのではなく、歩きながらリアルタイムで、自分たち自身が次々と死体へと変わっていくことだ。しかも、この旅には目的地すら存在しない。「自分以外の49人が死ぬまで」という他者の死こそがゴールであり、彼らは英雄になって故郷へ帰るためではなく、ただ自分だけが生き残るためだけに足を動かし続ける。ここでは若者の通過儀礼が、他者の犠牲を前提とした生存競争へとグロテスクにすり替えられている。


 そして『ロングウォーク』は、物語構造においても『スタンド・バイ・ミー』が有していた“救済”を徹底的に打ち砕く。向こうが永遠の輝きを放つのは、物語が「大人になった主人公の回想」だったからだ。「あの12歳の夏のような友人は、二度とできなかった」と振り返る視点があるからこそ、少年たちの旅はノスタルジーとして美しくパッケージングされる。


 しかし、この映画には過去を振り返る大人など存在しない。彼らは今この瞬間、文字通り歴史から抹消されていくからだ。思い出を語る特権すらシステムに奪われ、美しい感傷に浸る間もなく、現在進行形で血と肉と嘔吐物にまみれていく。


 ノスタルジーによる魂の救済をひっくり返し、少年期という輝かしい時間が国家のシステムによって物理的に解体されていくプロセスを描いた、いわば“セルフ死体量産ロードムービー”。語り手なき死を容赦なく突きつけ、青春の感傷的な消費を強烈に拒絶する点にこそ、本作の圧倒的な凄みが宿っている。




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