2026.09.02
※本記事は物語の結末に触れているため、映画未見の方はご注意ください。
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記念すべき劇場長編デビューへの軌跡
かつて日本の映画界では、大ヒット作にあやかり、まったく無関係の作品に続編っぽい邦題をつけるという、かなり極悪なプロモーションが横行していた。
『サスペリア』(77)の大ヒットを受けて、ダリオ・アルジェント監督の過去作を『サスペリアPART2』(75)として公開したり、マカロニ・ウェスタンの金字塔『荒野の用心棒』(64)に便乗して、まったく別物の映画を『続・荒野の用心棒』(66)として売り出したり。これが災いして、本当の続編が『夕陽のガンマン』(65)として公開されてしまうという、本末転倒な事態まで起こる始末。
スティーヴン・スピルバーグの劇場用長編デビュー作『続・激突!/カージャック』(74 原題:The Sugarland Express)もまた、そんな洗礼を浴びた一本だ。パトカーを乗っ取ってテキサスのハイウェイをひた走る物語だから、たしかに車は出ずっぱりなのだが、『激突!』(71 原題:Duel テレビ映画)とはなーーーーーんの関係もない。あまりにも乱暴すぎるネーミングである。

『続・激突!/カージャック』(c)Photofest / Getty Images
この映画のベースになっているのは、1969年に実際に起きた警官拉致事件だ。その目的は、福祉局に取り上げられ、里親のもとへ送られた幼い息子を取り返すこと。妻のルー・ジーン(ゴールディ・ホーン)は、窃盗罪で服役中の夫クロヴィス(ウィリアム・アザートン)を強引に脱獄させ、一路テキサス州のシュガーランドを目指す。
ところがその道中、些細なトラブルからスライド巡査(マイケル・サックス)をパトカーごと人質にとるハメに。結果として、何百台もの警察車両やマスコミ、野次馬たちが後ろをゾロゾロとついてくる、前代未聞の大追跡劇へと発展していく。
幼い我が子を取り戻すための逃避行と聞けば、涙を誘う感動のロードムービーを期待するかもしれない。だが、当時のユニバーサル・ピクチャーズ上層部は、この企画に難色を示していた。アメリカン・ニューシネマの潮流を汲む、救いのない物語だったのも理由のひとつだが、ネックになったのがスピルバーグのキャリア。テレビ界でこそ頭角を現していたものの、映画の実績はゼロ。ハリウッドの巨大スタジオからすれば、彼はまだ「少しばかり優秀な若手監督」に過ぎなかったのである。
この状況を打破したのが、リチャード・D・ザナックとデヴィッド・ブラウンという、大物プロデューサーだった。彼らは、テレビ界で非凡な演出力を見せつけていたスピルバーグという才能に賭け、スタジオを粘り強く説得。かくして、のちに映画界の頂点に君臨する男の、記念すべき劇場長編プロジェクトが産声を上げた。