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『バーフバリ 伝説誕生』『バーフバリ2 王の凱旋』一大スペクタクルを築き上げた周到な計算と作品構造
2019.01.01
カタルシスを発生させる周到な計算
このようにスケール感や高揚感が魅力の作品であることは間違いないが、大味な作品というわけでもない。例えば、バーフバリがカッタッパと諸国行脚するエピソードのなかに、地方の裁判所で大岡裁きのような機転の利いた判決を傍聴して、バーフバリが感銘を受ける場面があった。それが後にデーヴァセーナ裁判におけるバーフバリのとっさの行動の伏線となる。
また、主人公バーフバリを窮地に陥れようと画策するバラーラデーヴァが、衆人環視の状況において重臣である父親にバーフバリを批判させる絶好のタイミングを狙うのを、肩に置いた手によって表現するなど、本作の豪快な見せ場を支えているのは、細心の演出なのである。
インド映画には、「ナヴァラサ」と呼ばれる、人間の9つの感情を作品にとり入れるという考え方が存在する。本シリーズもまた、豊かな感情がつめ込まれた内容になっている。それは観客の感情移入をうながし、快感を与えるカタルシスへと誘導していく。
『バーフバリ 伝説誕生』『バーフバリ2 王の凱旋』© ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.
カタルシスは、抑圧と解放の表現の落差によって生まれる。奴隷剣士として汚い仕事を押し付けられてきたカッタッパや、信念を曲げず道理を通すことで王国から追放されるバーフバリ、役立たずだと思われていた登場人物が秘められた才能を見せるなど、様々なカタルシスが用意されている。それを象徴していたのが、『伝説誕生』における、青年・シヴドゥの長大な滝登りの描写であろう。艱難辛苦を乗り越えて到達するからこそ、大きな愉悦が与えられるのだ。
だが、それだけでは本作の素晴らしさを説明するには、まだ不十分である。「バーフバリ」には、まだ隠された何かがあるはずだ。