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あなたも空を翔べる!様々な技術が投入された『スーパーマン』の特殊効果

SUPERMAN and all related characters and elements are trademarks of and c DC Comics. c 2011 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

あなたも空を翔べる!様々な技術が投入された『スーパーマン』の特殊効果

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活用されたフロント・プロジェクション



 もうひとつのフロント・プロジェクションは、1960年代後半から映画に活用されるようになったもので、特殊なスクリーンとキャメラの間に45度の角度に置いたハーフミラーを置くことで、被写体の影がスクリーンに映り込むことはない。これを大々的に用いたのが『2001年宇宙の旅』(68)で、冒頭の人類の夜明けの背景部分は、縦40ft×横90ftのスクリーンに投影された南西アフリカの風景である。今見ても合成とは一見して気づかないが、この作品では宇宙船の窓から見える地球や月面でもフロントプロジェクションが活用されている。


 『2001年宇宙の旅』以降、『女王陛下の007』(69)、『トラ・トラ・トラ!』(70)などでもフロント・プロジェクションが効果的に使用されるようになり、映画の表現形式が大きく前進した。その噂は日本の映画界にも届き、真珠湾攻撃をめぐる日米の攻防を描いた『トラ・トラ・トラ!』の日本側の監督の1人だった深作欣二は、飛行シーンの撮影でフロント・プロジェクションが使用できるというので、大いに期待していた。ところが撮影所以外の倉庫を使って撮影していたこともあり、フロント・プロジェクションに必要な光量が足りず、最終的にはホリゾントの背景に雲を描き、飛行機を吊るす伝統的な日本の戦争映画と同じ方式で撮ることになったという。


 余談だが、70年代半ばには日本の各映画会社でもフロント・プロジェクションは取り入れられ、東映京都撮影所も『恐竜・怪鳥の伝説』(77)の製作にあたって購入したが、その前に試験的に使用した『沖縄やくざ戦争』(76)では、技術的なテストなしにぶっつけで使用してみたところ、スクリーンに映される背景と手前に立つ被写体との焦点距離が合わず、膨大な時間を浪費したという。


 さて、『スーパーマン』では、これまでにない自由自在な飛行を可能にせねばならない。そこで、フロント・プロジェクションによる撮影を担当したイギリスのベテランキャメラマンでもあるデニス・クープは、静止しているスーパーマンをキャメラが自在に動くことで飛行しているように見せる手法を駆使することにした。移動車やクレーン、さらにズームレンズを2本搭載したフロント・プロジェクションのシステムを用いて、手前の被写体にキャメラがズーム・インすると、背景を映す映写レンズも連動してズーム・インするので、そこに移動車やクレーンも併用する。そうすると完成した映像では手前の被写体だけがキャメラに接近してくるように映り、つまりはスーパーマンが画面に向かって飛んでくる映像に活用できた。



『スーパーマン』SUPERMAN and all related characters and elements are trademarks of and c DC Comics. c 2011 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.


 こうして、観客が自分も飛んでいると思えるような自由な飛行シーンが撮影されたわけだが、意外に問題となったのがスーパーマンのケープだった。飛行中は当然ながらケープがはためかないとリアリティが出ないが、扇風機で風を送るだけでは身体に巻き付いてしまってヒラヒラとは舞ってくれない。そこで、ケープにバッテリー仕掛けの釣り竿のような装置を仕込み、リモコンでケープの動きも速さもコントロール可能にしたというのだから、細部にわたるこだわりによって、スーパーマンは地上から離れて飛翔できたことがうかがえるだろう。


 『スーパーマン』のアメリカでの宣伝コピーは“You'll Believe a Man Can Fly”、日本では「あなたも空を翔べる!」だった。かつてのアニメーションで飛翔シーンを誤魔化していた時代ならば、このコピーを使おうとは思わなかっただろう。この日米のコピーは、特殊効果の達成を高らかに示す言葉でもある。



【参考資料】

『キネマ旬報』(キネマ旬報社)

『映画テレビ技術』(一般社団法人 日本映画テレビ技術協会)

『映画撮影』(日本映画撮影監督協会)

『ムービーマジック SFX映画物語』(ジョン・ブロスナン著 福住治夫 訳/フィルムアート社)

『リチャード・レスター/ビートルズを撮った男』(アンドリュー・ユール著 島田陽子 訳/Produce Center)

『スーパーマン モーション・ピクチャー・アンソロジー スペシャル・バリューパック』Blu-ray(ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント)

『The Making of Superman the Movie』(David Michael Petrou著/Warner Books)




文: モルモット吉田

1978年生。映画評論家。別名義に吉田伊知郎。『映画秘宝』『キネマ旬報』『映画芸術』『シナリオ』等に執筆。著書に『映画評論・入門!』(洋泉社)、共著に『映画監督、北野武。』(フィルムアート社)ほか



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『スーパーマン 劇場版 <4K ULTRA HD&ブルーレイセット>(2枚組)』

2月6日発売 ¥5,990+税

ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント

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