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『ダンケルク』演技の才能を開眼させた人気ミュージシャン、その後のキャリアを考えさせる
音楽から演技への転身は人それぞれ
鮮烈だったケースを挙げるとしたら、エミネムか。
ラッパーとして絶大な人気を集めていた彼が、いきなり映画初出演にして主演を任された。『8 Mile』である。半自伝的なストーリーなので、ほぼ「自分」を演じればいいというメリットはあったが、そこを考慮しても、シンプルに演技が激賞された。以降、エミネムは本人役での特別出演を除けば、映画やドラマに俳優として出演していない。その意味では、ミュージシャンが本気で演技に挑んだ潔い一作だといえる。
同じようなケースは、ビュークだ。『ダンサー.イン・ザ・ダーク』で衝撃的な熱演と熱唱でヒロインを体現した彼女は、その後、音楽を担当した映画(『拘束のドローイング9』)にチラリと出演したことはあったが、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のみが出演作として燦然と輝いている。
エミネムやビュークとは対照的に、俳優業に挑戦して以降、音楽活動と両立させているのがジャスティン・ティンバーレイク。『ソーシャル・ネットワーク』など完璧に「演技者」として評価される作品も増えている。主演を任された『TIME/タイム』でジャスティンをインタビューしたとき、彼は音楽と演技の関係について、こんな風に答えていた。
「ステージで音楽を演奏するのって、演劇的要素が強い。僕の最新アルバムは、僕が創り出したキャラクターでもある。そういう共通点があるけど、僕にとって演技は私的な作業で、開放感を味わう仕事でもある。音楽では、作詞家で演出家、プロデューサー、衣装係と多くの仕事を僕自身が手がけるわけで、責任の重さは大きく、むしろ自分との隔たりを感じることもあるんだ」。
演技の仕事をするミュージシャンとして、これは興味深い発言であった。
ジャスティンと同じように、音楽と演技の両輪で活躍を続けるのは、アイス・キューブ、コモンなどがいる。一方でウィル・スミス、マーク・ウォールバーグのように俳優としてトップの地位を築いた後は、音楽とは一定の距離をおいてしまったスターも数多い。ジャスティン・ティンバーレイクの語る責任感の大小や、開放感と関係しているのかもしれない。