(C)2015 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
『サウンド・オブ・ミュージック』を生み出した20世紀フォックスの輝かしい歴史
2019.07.09
物語と背景が一体化する瞬間の快感
第二次大戦前夜のオーストリア、ザルツブルク。修道女には不向きだったヒロインのマリアが、院長の計らいで家政婦として派遣されたトラップ一家をまるで軍隊のような規律から解放し、歌とユーモアで再生していく。マリアの存在が、家族の温もりを忘れていた一家に再び団欒をもたらすプロセスが、名曲と共に綴られていくのだ。人が人として輝ける場所の模索、忘れていた音楽の限りない可能性、愛することの怖さと勇気、などなど。この物語は観客に多くのことを教えてくれる。
『サウンド・オブ・ミュージック』(C)2015 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
インターミッションを挟んだ後半では、前半の楽しさとは一変してイデオロギーと平和の大切さも解く。しかしそれすら、いつしかアルプスの絶景に掻き消されていく。空から始まった映画が、最後に再び空へ帰るのだ。物語と巧みにリンクしていた背景が、その瞬間、一体となって大空に吸い込まれていくような快感。まさにそれこそが、『サウンド・オブ・ミュージック』が不朽である所以のような気がする。
映画の公開後、世界中からファンがザルツブルクに押しかけ、今もロケ地巡りツアーが人気だと聞く。中には、単独でザルツブルクを数十回も訪れ、新たなロケ地を見つけ出しては知識を上書きしているマニアックなファンもいる。つまり、『サウンド・オブ・ミュージック』は今も稼働し続けているのだ。
ラストカットが撮影されたドイツのロシュフェルド峠(撮影/岩川勝至)