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『未知との遭遇』スピルバーグの傑作SFに、映画監督トリュフォーがキャスティングされた理由

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『未知との遭遇』スピルバーグの傑作SFに、映画監督トリュフォーがキャスティングされた理由

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トリュフォーがこの映画にもたらしたもの



 このトリュフォーの参加決定に、現場のスタッフたちも大いに湧いたという。誰もが「これは通常のSF映画とは格が違う。凄いことになりそうだ」という想いを抱くようになり、スピルバーグもこの企画に関してこれまで以上に自信を持つようになった。


 と、ここでもう一つの“トリュフォー効果”について考えてみたい。本作は確かに基本軸として「宇宙人との交流」というストーリーがある。だが、これにとどまらず、本作のUFOや宇宙人といった存在を試しに「映画のメタファー」として読み解いていくと、奇妙なほどにストンと胸に落ちる節がある。これはもしかすると解釈のひとつとして、「映画についての映画」と捉えることも可能なのではないだろうか。


 映画はいつも私たちを“未知なるところ”へ連れて行ってくれる。あの暗闇から差し込むまばゆい光。自ら光の世界へと足を踏み入れ、またいつの日かあそこへ帰りたいと願わずにはいられなくなる衝動。日常の中でそのことを考えると、恋い焦がれて、居てもたっても居られなくなる胸の疼き。映画ファンのあなたなら、主人公が経験するこれらの心境は、いずれも身覚えがあるものばかりのはずだ。


 もしもこれが通常のSF映画であればそんなメタファーが発動する余地などなかっただろう。しかし本作にはトリュフォーがいる。そしてスピルバーグがいる。二人が見つめる同じ方向にある光(仏語で“リュミエール”)といえば、それはやはりスクリーンに映し出される“映画そのもの”と受け止めることもできるのではないか――――。もちろんこれは一例にすぎないが、『未知との遭遇』はトリュフォーの参加によって「別格の存在」となったことで、あらゆる深読みの余地を提供する作品となったのである。これもまた誕生から40年経った今なお一向に色あせず、普遍的な魅力を持ち続ける理由のひとつと言えよう。


 まだ観たことがない人も、すでにご覧になっている方も、ぜひ今一度、この傑作をじっくりと味わってみることをお勧めしたい。トリュフォーの慈愛に満ちた眼差しも相まって、本作は単なる宇宙SFを超え、あなたの心を透き通った神聖味で包み込んでいく。そこが自宅のテレビ画面だったとしても、きっと大きな感動をもたらしてくれるはずだ。



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