MOTION PICTURE (C) 2004 REVOLUTION STUDIOS DISTRIBUTION COMPANY, LLC. ALL RIGHTS RESERVED. TM, (R) & Copyright (C) 2013 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.
孤高のヒーロー『ヘルボーイ』に垣間見る、ギレルモ・デル・トロのコミック愛
奇才によって昇華された『ヘルボーイ』の世界
時は流れて現代。大人となったヘルボーイは、米国政府の極秘機関、超常現象調査防衛局(BRPD)の一員として、現世に生きる魑魅魍魎との密かな戦いに明け暮れていた。そして時を同じくして、暗黒に消えたラスプーチンが現代に復活し、世界を滅ぼす謀略に向けて行動を始めていたのだった――。と、大方のオリジンは原作に準拠しているのだが、「正義のヘルボーイが悪魔を滅ぼす」なんて、単なるアクションアドベンチャーでは決して終わらない。
念動発火能力(パイロキネシス)を持つリズ・シャーマン(セルマ・ブレア)との恋愛的要素を付与し、相棒として新人FBI捜査官ジョン・マイヤーズ(ルパート・エヴァンス)を配することで、バディドラマを演出。デル・トロ監督は、脚本家ピーター・ブリッグスの初稿からアクション・シーケンスを大幅に削るなどし、人間ドラマ的描写を増やしたのだとか。そういうふうにして、映画独自のシナリオを作り上げたのだ。
『ヘルボーイ』MOTION PICTURE (C) 2004 REVOLUTION STUDIOS DISTRIBUTION COMPANY, LLC. ALL RIGHTS RESERVED. TM, (R) & Copyright (C) 2013 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.
本作は、原作の雰囲気を残しつつも、デル・トロ監督のイマジネーションの発露として、そして奇才のために用意されたキャンバスのように機能している。ゆえに本作のストーリーラインは、原作のそれとは少し異なる方向性を示しているが、マイク・ミニョーラによる原作のヴィジュアル面は、極めて忠実に再現されているので安心してほしい。怪優ロン・パールマン演じるヘルボーイは、コミックブックから飛び出してきたように鮮烈なヴィジュアルで魅了してくるし、陰と陽のコントラストはミニョーラのアートそのものだ。事実としてこれはアメコミ映画であるのだが、それ以前に本作は、デル・トロ監督の映画としてもきちんと成立したものとなっている。