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孤高のヒーロー『ヘルボーイ』に垣間見る、ギレルモ・デル・トロのコミック愛

MOTION PICTURE (C) 2004 REVOLUTION STUDIOS DISTRIBUTION COMPANY, LLC. ALL RIGHTS RESERVED. TM, (R) & Copyright (C) 2013 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.

孤高のヒーロー『ヘルボーイ』に垣間見る、ギレルモ・デル・トロのコミック愛


コミックス界の魔導士、マイク・ミニョーラのスタイル



 1960年9月10日、日本ではカラーテレビジョンの本放送が開始され、映像の精彩感にお茶の間が嬉々とした。コミック作家のマイク・ミニョーラは、その6日後の同年9月16日、米カリフォルニア州バークレーに誕生した。幼少期には幽霊やモンスターといった異界の住人を寵愛し、少年時代にはヴィクトリア朝時代の古典文学、レイ・ハリーハウゼンの特撮映画、パルプ雑誌に没頭した。これらカルチャーが現在のミニョーラを形作る、比類なき才能の源泉であることは間違いないだろう。


 1982年、カリフォルニア・カレッジ・オブ・ジ・アーツを卒業した彼は、マーベル・コミックでペン入れ担当(インカー)としてデビュー。その後、下絵担当(ペンシラー)に転向し、「デアデビル」「ハルク」など人気キャラクターに携わった。また、DCコミックスでは「バットマン」の表紙などを担当し、独自のスタイルで頭角を現わしていく。


 そして1993年、新興の出版社、ダークホースコミックスに移籍した彼は、自前のキャラクターを創造するに至る。それがヘルボーイだった。ヘルボーイの初登場はイベント用の特別冊子「San Diego Comic Con Comics #2」のわずか4ページの短編で、その後、クリエイター仲間のジョン・バーンが手がける「Next Men #21」にゲスト出演。そして翌94年4月、ヘルボーイを主役に据えた記念すべき単行本、四部作の第一巻「Hellboy: Seed of Destruction #1」がリリース。日本では「ヘルボーイ:破滅の種子」(小学館集英社プロダクション刊)の題で出版されており、デル・トロ監督の映画版『ヘルボーイ』はこの作品をベースとしている。原作は、ミニョーラの独創的なヴィジュアル・スタイルと、惹き込まれるストーリーでたちまち人気を博した。



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 アメコミ業界の三大出版社を渡り歩いてきたミニョーラは、いよいよコミックスの枠を飛び出して映像の世界にまで足を踏み入れる。ウォルト・ディズニー製作の長編アニメーション『アトランティス 失われた帝国』(01)でプロダクション・デザイナーを務め、デル・トロ監督の前作『ブレイド2』では、デル・トロ監督の強い要望もあって、ミニョーラが招聘された。無類のコミックス・マニアだったデル・トロ監督もまた、ミニョーラのアートに完全に心酔した人物のひとりだったのだ。ミニョーラは映画『ブレイド2』のヴィジュアル面を監修し、コミックスの鮮烈なアートを果敢にも映画という媒体に持ち込んだのだ。


 そして本作『ヘルボーイ』では、いよいよミニョーラ自身のコミック作品が実写として世界に飛翔した。当初、『ヘルボーイ』の映画化の企画を知ったデル・トロ監督は、すぐさまプロデューサーに接触し、自分を売り込んだという。本作『ヘルボーイ』はいうなれば、デル・トロ監督の奇才たりうる能力と、ミニョーラの類い稀なる鮮烈アートの邂逅だったわけだ。


物語こそ一部に脚色を加えているが、原作に見る影と色彩のシンプルなグラフィック・スタイルというのは、そのまま銀幕に転写されている。この時すでに、原色を多用しているコントラストの強い画風と、ミニマリズムに傾倒した簡素なアートは、ミニョーラの作家スタイルとして確固たるものとなっており、彼のスタイルを模倣する作家は多かった。



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 模倣という点で言うと、原作の『ヘルボーイ』だって、戦前の怪奇映画や、世界各地の民話のほか、ミニョーラが子ども時代に慣れ親しんだ多くのカルチャーからの借用に満ち溢れている。実在した怪僧ラスプーチンを取り入れてみたり、オカルトに傾倒したナチ党やトゥーレ協会といった秘密結社を登場させてみたりして、珍妙なリアリティを作り上げている点こそが、『ヘルボーイ』の魅力なのだ。


 ヘルボーイがロングコートを着ている理由だって、ミニョーラが少年時代に読んだパルプ雑誌の探偵のイメージから来ているし、ヘルボーイがあまり使いもしないのに拳銃を携えている点も、要はそういうことなのだ。この魅力を実写映画として見事に再現したデル・トロは、紛うことなきコミックス信者であると断言できるはずだろう。



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