相次ぐ監督の降番、スタジオの横槍
さて、『エイリアン3』。本作は製作過程でストーリーラインや脚本がどんどん変わり、監督も起用されては降板して……という状態が続く。最初に正式に監督に起用されたのは、『ダイ・ハード2』のヒットで勢いづいていたレニー・ハーリン。1、2作目のテイストが異なったように、彼も前2作とは異なるものを求める。もう隔壁や扉に囲まれて逃げ回る展開は十分だ。そう考えた彼は、脚本家に違うものを求める。前作で人気を博したニュートやヒックスのキャラクターは、この時点で消滅した。
新たな脚本家として、のちに『ピッチブラック』(00)の監督として脚光を浴びるデビッド・トゥーヒーが雇われ、監獄惑星を舞台にした物語を創造。ハーリンはこれにも満足せず、遅々として進まない製作に嫌気がさし降板する。しかし、彼は動物に寄生していた四足歩行のエイリアンという斬新なアイデアを残していく。
『エイリアン3』(c)Photofest / Getty Images
次に監督に抜擢されたのは、ニュージーランド映画として初めてカンヌ国際映画祭に出品された『ビジル』(84)で、注目されたヴィンセント・ウォード。彼にはアイデアがあった。木造の人工惑星に中世を思わせる世捨て人のような修道士たちが戒律を守って暮らしている。そこにリプリーを乗せた宇宙船が墜落し、ニュートに寄生していたエイリアンが誕生・暴走する、というものだ。
そんなスリラーに立脚したリプリーの物語は、ニュートやヒックスの死を視野に入れていた。“なぜ、私の周りの人々は、皆死んでしまうのだろう?”――そんな思索が、彼女の贖罪としてドラマに反映されていたのだ。
ニュートやヒックスがいなくても、これならイケる。製作の20世紀フォックスもスタッフも乗り気になり、一度はゴーサインが出され、企画が猛スピードで動き出した。ロンドン最大のパインウッドスタジオのセット建造も進んでいた。全米公開日もアナウンスされ、あとは完成に向けて一直線……となるはずだった。
しかし、かさむ製作費を案じたフォックスは急きょ方針を変え、安全策を指示する。修道院のようなお堅い星よりも、やはり荒々しい監獄惑星の方がいいのでは? 地味な木造惑星ではなく、鉱山惑星にしろ!……一度は許可を得たアイデアを根本から覆され、ウォードもまた降番した。