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『トミー』ザ・フーと監督ケン・ラッセル、時代の転換点で出会った運命

『トミー』ザ・フーと監督ケン・ラッセル、時代の転換点で出会った運命

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『ロケットマン』との共通点



 この映画でピンボールの魔術師を演じていたのがエルトン・ジョンで、絶頂期の70年代に出演した貴重な出演作となっている。エルトンのヒット曲「ピンボールの魔術師」は、彼の伝記映画『ロケットマン』でも歌われる。この作品自体、現実とファンタジーをミックスしたような構成になっていて、どう考えてもラッセル映画の影響を受けている。



 それもそのはず、監督のデクスター・フレッチャーは元俳優で、ラッセル監督の『ゴシック』(86)もに出演していたからだ。海外での『ロケットマン』のレビューを読むと、ラッセル作品との比較が目立つ。


「ある部分はジュークボックス・ミュージカル、ある部分はロック・オペラ。音楽評伝映画のアンファン・テリブル、ケン・ラッセルが撮ったであろう作品」(BBCラジオ)


「『ロケットマン』を思わせる過去の作品がいくつかあるが、ザ・フーのロック・オペラをシュールに映画化した『トミー』もその一本」(ザ・グローブ・アンド・メール)


「事実とフィクションをミックスしたこの作品は、シュールな過剰さがあったラッセルの『リストマニア』などを想起させる」(ザ・ガーディアン)


 伝記的な事実そのものを描くのではなく、音楽にインスパイアされたファンタジー的な映像を中心にして、そのミュージシャンの内面に迫る。それはラッセルが『マーラー』や『リストマニア』でも用いた音楽映画の先駆的な手法。ロケットマンに扮したエルトンが空に飛び立つ場面などは『リストマニア』のロケットで旅立つリスト(ロジャー・ダルトリー)の姿をも思い起こさせる。また、両親とコンプレックスを抱えた少年との葛藤という『ロケットマン』のテーマは『トミー』の親子関係に通じる部分もある(監督本人もインタビューの中でラッセル映画の影響を認めている)。



 ケン・ラッセル自身は『トミー』撮影後もエルトン・ジョンと交流があり、85年にエルトンのヒット曲「悲しみのニキタ」のミュージック・ビデオを撮った。また、89年の文芸物『レインボウ』(D・H・ロレンス原作)の出演者のひとりにエルトンを考えたこともあったようだ。そんなエルトンの伝記映画『ロケットマン』を、今度はラッセル映画の出演者が手がけることで、かつては先駆的だった音楽映画の感覚が現代にも継承されたのだ。




文:大森さわこ

映画ジャーナリスト。著書に「ロスト・シネマ」(河出書房新社)他、訳書に「ウディ」(D・エヴァニアー著、キネマ旬報社)他。雑誌は「週刊女性」、「ミュージック・マガジン」、「キネマ旬報」等に寄稿。ウエブ連載をもとにした取材本、「ミニシアター再訪」も刊行予定。



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作品情報を見る



『トミー』

1975年/イギリス/カラー/本編106分/英語5.1ch/ビスタ/原題:Tommy

配給:ツイン

8月30日(金)よりアップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺ほかにて順次公開!

(c)1975 THE ROBERT STIGWOOD ORGANISATION LTD. All Rights Reserved.

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