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『トミー』ザ・フーと監督ケン・ラッセル、時代の転換点で出会った運命

(c)1975 THE ROBERT STIGWOOD ORGANISATION LTD. All Rights Reserved.

『トミー』ザ・フーと監督ケン・ラッセル、時代の転換点で出会った運命

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映画化への道のり



 ザ・フーのオリジナル・アルバムは69年で、その後、72年にはオーケストラバージョンとして舞台で上演され、リンゴ・スターロッド・スチュワートなど有名アーティストも参加している(こちらもアルバム化されている)。映画化の話はオリジナル・アルバムが発売された直後から出ていたようだが、クリームビージーズの音楽プロデューサーだったロバート・スティグウッドの参加で具体化していった。彼はキリストの生涯を描いたロック・ミュージカル「ジーザス・クライスト・スーパースター」の映画化(73年、監督ノーマン・ジュイソン)を成功させ、次なる企画として「トミー」に白羽の矢を立てた(その後は大ヒット作『サタデー・ナイト・フィーバー』(77)も製作)。


 スティグウッドの発案で、ケン・ラッセルが監督として浮上した。彼の出世作はD・H・ローレンス原作の文学作品『恋する女たち』(69)で、その大胆な性描写が話題を呼んだ。ザ・フーは音楽界、ラッセルは映画界。69年という時代の転換点に新しい表現を模索しようとしていた両者の運命的な出会いとなった。    



『トミー』(c)1975 THE ROBERT STIGWOOD ORGANISATION LTD. All Rights Reserved.


 ピートはケンの起用に関して、当時、こんなことを言っている。「彼は(69年には)アート系の監督のイメージがあった。彼が撮ってくれたら、どんな素晴らしいだろうと思ったものだ。僕がいろいろ説明しなくても、自分なりの映画を撮ってくれると考えたからだ」


 60年代はBBCで『エルガー』(62)や『ソング・オブ・サマー』(68)などクラシックの評伝映画で評価され、その大胆な解釈と映像表現によって“BBCの恐るべき子供”と呼ばれたラッセル。音楽は彼の映画に不可欠なものだったが、ロックにはまるで興味がなく、クラシック派だったケン。しかし、ザ・フーのアルバムにはほれ込み、彼自身が「あらゆる芸術を含めて20世紀最高の作品」とほれ込んだ「トミー」の脚色を始めた。


 クラシックを題材とした音楽映画としては70年にはチャイコフスキーを同性愛者として描いた『悲愴 恋人たちの曲』、74年にはマーラーの内面を大胆な映像で見せた『マーラー』など、常識を超えた作品を手掛けてきた。扱っている音楽はクラシックだが、その感覚はロック世代の破壊的なパワーをもっていた。ケンにとって、『Tommy』は新しい音楽映画への旅立ちとなった。



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