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今のハリウッドの風潮に風穴を開けたい
Q:驚くほどチャレンジングな作品になっています。なぜジョーカーだったのでしょうか。
フィリップス:僕はコミックを読んで育ったけれど、オタクと言えるほど夢中でもなかった。ただ、そのなかで一番、興味をもっていたキャラクターはジョーカーだったんだ。彼は特殊な能力をもっているわけではなく、いわゆるサイコパスなのに、圧倒的な存在感があったからね。
では、なぜ今回、ジョーカーだったのかと言えば、彼には確固たるオリジンストーリーがなかったからだ。ということは、彼の誕生を自由に描けるということになる。僕の今回の製作意図やコンセプトにピタリと当てはまったんだよ。
Q:その製作意図というのは?
フィリップス:簡単に言うと「今のハリウッドの風潮に風穴を開けたい」かな。ここ10年くらいのハリウッドはアメコミ映画中心に動いている。アメコミ映画が世界を征服しちゃったんだ。僕も、多くの人が熱狂しているのは理解出来るし、なかには素晴らしい作品もある。が、その反面、ほかの映画、僕の大好きなキャラクタースタディ(キャラクターが物語を動かすドラマ)のような作品は本当に作りづらい状況になってしまった。たとえ作れたとしても、果たして人々が観てくれるのだろうか? そんな疑問さえ抱いていた。
そこで僕が考えたのが、「だったら、アメコミのキャラクターを使って、キャラクタースタディの映画を作ればいい」だよ。そのコンセプトにジョーカーはぴったりだったわけさ。
Q:権利をもっているDCやワーナーがよくゴーサインを出してくれましたね。
フィリップス:ああ、それはよく訊かれることなんだけど、自分でもびっくりするくらいスムーズだった。ジョーカーを描く上でのいくつかのお約束事があって、それを守りさえすれば何をやってもいいって感じかな。撮影中も一切、口出しはなかった。もしかしたら、アメコミ映画を作るよりも、はるかに製作費が安かったせい(およそ5,500万ドル)かもしれない(笑)。
でも、言っておくけど、低く抑えようとしたわけじゃないよ。この映画にはふさわしいバジェットで作っただけだ。おかげで、アメコミキャラクターが主人公にもかかわらず、まるで違う雰囲気の映画になったと思っている。