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サイコパスを信じるとどうなるか体感してほしい――『テッド・バンディ』ジョー・バリンジャー監督【Director’s Interview Vol.47】

サイコパスを信じるとどうなるか体感してほしい――『テッド・バンディ』ジョー・バリンジャー監督【Director’s Interview Vol.47】


1970年代のアメリカを震撼させた殺人鬼テッド・バンディ。30人以上もの女性を殺害、被害者の頭を砕き、レイプし、歯型を付けるなどの残忍すぎる犯行、裁判では無罪を主張して自分で弁護人を務めるなど、他に類を見ない異常犯罪者だ。


だが彼には、さらに恐るべき一面があった。それは、犯した罪と外見のギャップ。虫も殺せなさそうな甘いマスクと好青年ぶりで多くの女性を骨抜きにし、テレビ中継された裁判でさらにファンが拡大。性犯罪史に残る悪行を犯しながらも、冤罪を信じる女性たちが後を絶たなかったという。




そんなテッドを題材にした映画『テッド・バンディ』が、12月20日に日本公開を迎える。主演は『グレイテスト・ショーマン』(18)のザック・エフロン。美青年ながら瞳の奥は暗く沈むテッドの二面性を、これまでのイメージを覆す怪演で体現した。共演にリリー・コリンズ、カヤ・スコデラーリオ、ジョン・マルコヴィッチ、ハーレイ・ジョエル・オスメントと演技派が並ぶ。


監督を務めたのは、Netflixオリジナルのドキュメンタリー『殺人鬼との対談:テッド・バンディの場合』(19)でもテッドを描いたジョー・バリンジャー。同じ題材でドキュメンタリーと劇映画の両方を同時期に製作するのは、極めてまれなことだ。アカデミー賞とエミー賞にダブルノミネートを果たしたドキュメンタリー『パラダイス・ロスト』シリーズなど、世界的に評価される映像作家は、いかにしてテッド・バンディという男と向き合ったのか? 来日したバリンジャーに、制作の舞台裏を聞いた。


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精神的にこたえた、テッドと向き合った長期間



Q:『殺人鬼との対談:テッド・バンディの場合』も本作も恐るべき傑作ですが、同じ事件をドキュメンタリーと劇映画の両形態で描くのは、かなりの挑戦だったのではないですか?


ジョー:たまたま同時期に製作することになったのだけど、「挑戦」といった意識はなくてね。ドキュメンタリーも劇映画も、それぞれの最適な形を考えながら作れたと思う。


ドキュメンタリーの方は、殺人者の心理に深く潜り込み、劇映画の方は被害者の視点で、彼女たちの体験を描く。両方手掛けたことで、焦点を何に当てるのかが、よりクリアになったんだ。



Q:なるほど。むしろやることが整理された感覚なんですね。


ジョー:そうだね。この事件の全貌を先にドキュメンタリーで描いていたからこそ、劇映画の方ではフォーカスを一点に集中できた。それも、今回の恩恵といえる。ドキュメンタリーの制作過程で入手した、他では見られない資料を、役作りや美術のために渡せたしね。僕自身も、ドキュメンタリーの撮影が終わるころにはテッドの専門家になっていた。


実は劇映画を撮るのは久しぶりで、前の映画では高評価を得られなくてね……。自分はまだまだ映画監督の器じゃないと思うし、己の力量には頼れない。でも、キャストやスタッフは僕のドキュメンタリー畑の経験や、テッドについての知識をすごく信頼してくれたんだ。


チャレンジといえることがあるとすれば、テッド・バンディという男と長期間向き合わなければなかったのは精神的に大変ではあったね。




Q:おっしゃる通り、本作はテッドという殺人犯の「怖さ」を描いた作品かと思いますが、直接的なバイオレンス描写がほぼ全くない。これは何故でしょう?


ジョー:そもそも、世のトゥルークライム(実録犯罪)ものは、無責任になりすぎているように思う。


この手の作品の矛盾ともいえるけど、社会的なメッセージを伝えたくても、娯楽性がないと観てもらえない。多くの観客にとっては、たくさんある映画の中の一作に過ぎないわけだからね。その結果、娯楽性を追求しすぎて過剰なバイオレンス描写の映画があふれてしまった。


でも実在する人を描くわけだから、観客に向けた娯楽性は、被害者や家族にとっては悲劇になる。そこは、フィルムメーカーが責任を負わなければならない部分だと思う。だから本作では、バイオレンス描写を必要以上に抑えて作ったんだ。



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