三池崇史、黒沢清、園子温、山崎貴、大友啓史、そしてチェン・カイコー。名だたる映画監督たちに愛される男がいる。俳優・染谷将太。現在27歳だが、芸歴は約20年を数える若きベテランだ。
リアルで淡々とした“受け”の演技を特長としながらも、狂気をちらつかせる“攻め”の演技も変幻自在に使い分ける染谷。近年では役柄にどんどん幅が増し、現在放送中の大河ドラマ『麒麟がくる』では、あの織田信長役を任されるまでに。
さらに、『悪の教典』の三池監督と再び組んだ最新出演作『初恋』(20)では、組を裏切ろうとするヤクザ・加瀬を、振り切りまくった演技で体現し、新境地を開拓。ヤクザ・警察・チャイニーズマフィアをかき回し、物語の推進力となるキーキャラクターを実に快活に演じている。
まさに日本映画界に欠かせない実力派俳優でありながら、監督として自主映画制作も行うほどのシネフィル。今回のインタビューでは、『初恋』の舞台裏にとどまらず、映画にハマった思い出の作品や、“映画館”への想いについても聞いた。染谷の映画愛あふれるエピソードの数々を、ぜひ楽しんでいただきたい。
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小学生の時に訪れた、「1回休みたい」切望
Q:染谷さんの芸歴は、今年で約20年にも及びます。幼少期からここまで、俳優を続けるには苦労も多かったかと思うのですが、モチベーションが落ちることなどはなかったのでしょうか。
染谷:小学校の高学年くらいに、初めて「1回休みたい」と思った時期がありました。連続して行事に行けなくて、友だちとも遊びたくて……。
Q:7歳から活動されていますものね……。
染谷:でも、そう思いながら行ったオーディションに受かったんです。しかも、連続ドラマの準レギュラーの役をいただけて。そこからは特に「休みたい」と思うことはなくなりました。
Q:小学生時代にスランプを克服されたのは凄い……! 昨今、『初恋』のヤクザ役や大河ドラマで織田信長役、中国やウズベキスタンでの撮影も経験され、ますます活躍されるフィールドが広がっている印象です。
染谷:今までなかったような役割をやらせてもらうことが多いので、そのぶんこれまでとは異なる“責任”は感じます。『初恋』でも、三池監督の映画でヤクザ役を演じられる機会なんて、自分にはないと思っていましたから。ただ僕は、面白がらないと良いパフォーマンスが出せないタイプ。だから素直に、ありがたく楽しませてもらっています。