6.『万引き家族』（18） 監督：是枝裕和 120分
第71回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞した、日本映画史に残る一作。松岡の存在が、国際的に大きく知られた作品でもあろう。
東京の下町にたたずむ一軒家に暮らす、平和な一家（リリー・フランキー、安藤サクラ、樹木希林、松岡茉優、城桧吏）。しかし彼らは、本当の家族ではなかった。万引きで生計を立てる彼らがある日、親から虐待を受ける少女（佐々木みゆ）を誘拐し、“家族”の一員に迎えたことから、少しずつ隠されていた過去がはがれていく。
シェアハウスが舞台の『パレード』（10）や疑似家族を描いた『理由』（04）と共通する設定を含みつつも、「貧困」や「格差」といった社会問題に焦点が当てられており、是枝監督の過去作『そして父になる』（13）や『海街diary』（15）と同じく「血縁のない家族と、愛」を鋭く、温かく、痛みを交えてつづっていく。
松岡の役どころは、家族の一員で、普段は風俗店で働く女性。今の生活に安らぎを見出しながら、時折孤独にさいなまれるという現代人の不安と孤独を象徴するような存在。演技のさじ加減が難しいこの人物像を、的確に表現している。演技を「足す」のではなく「引く」、或いはそぎ落とすアプローチは、是枝監督の世界観と絶妙にシンクロ。松岡の幽かな儚さが、かえって哀愁を増幅させている。池松壮亮扮する風俗店の客との“つながり”が、愛というテーマを浮き彫りにする演出も秀逸だ。
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