2.『そこのみにて光輝く』（14） 監督：呉美保 120分
アカデミー賞外国語映画賞部門の日本代表に選出されたほか、メガホンをとった呉美保監督が、第38回モントリオール世界映画祭で最優秀監督賞に輝くなど、国内外で高く評価された人間ドラマ。
過去のトラウマにさいなまれ、人生を見失った無職の男・達夫（綾野剛）。彼はひょんなことから、夜の町で働く千夏（池脇千鶴）・前科者の日雇い労働者・拓児（菅田将暉）の姉弟と知り合う。ままならない人生の中で、互いの傷をいやすように距離を縮めていく達夫と千夏だったが、2人の間には試練が立ちはだかっていく。
陰のあるキャラクターを熱演した綾野・体当たりのシーンにも挑んだ池脇とともに、数多くの俳優賞に輝いた菅田。本作では、社交的で気のいい性格だが、情に厚すぎてけんかっ早い部分もある若者を生き生きと演じており、淡々としがちな作品に推進力と起伏を与えている。
自分の無力さに打ちひしがれ、達夫にすがりつき、抱擁を交わすシーンは、刹那的な中にも深い愛情を感じさせる名シーン。菅田が本作で見せた子犬のような無邪気さと狂犬のごとき攻撃性は、多くの観客を魅了した。
なお、『そこのみにて光輝く』と同じ、佐藤泰志が原作を務めた『海炭市叙景』（10）、『オーバー・フェンス』（16）をまとめて「函館3部作」と呼ぶ。
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