9.『生きてるだけで、愛。』(18) 監督:関根光才 109分
映画化もされた『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(07)や『乱暴と待機』(10)など、センセーショナルな作品を多数手がけてきた劇作家・小説家の本谷有希子の同名小説を映画化。
躁うつ病を抱え、生きづらさに辟易している女性(趣里)と、倦怠期に突入した彼女の恋人(菅田)のひりつく日常を描いた“痛い”ラブストーリー。『二重生活』では門脇麦と壊れかけたカップルを演じた菅田だが、本作では仕事と恋人の狭間で疲弊し、考えることを放棄してしまうナイーブなスクープ誌の記者を、ぐっと抑えた演技で表現している。
目は暗く沈み、うつろなまなざしと生気のない表情でぼんやりと佇む菅田の姿は、これまでの作品ではあまり見られなかったものといえるかもしれない。ひたすらに耐え忍び、ストレスが限界点に達してノートパソコンを窓ガラスにたたきつけたり、トイレの壁を殴ったりと、私たちが日々感じる“圧”を肩代わりしたような悲愴な演技は、観終えた後にも心に傷跡を残すのではないか。セリフに依存しない、菅田の表現力にうならされる作品といえよう。
自分の感情をコントロールできず、自食作用のように内側から壊れていく趣里の演技も、出色の出来。加えて、劇中で何度も登場する「暗い室内でコンビニ弁当を食べる」「大切な存在なのに、言葉で傷つける」シーンたちが苦しく、突き刺さる。ただそれは、私たちが経験した恋や青春の苦い思い出と、合致する部分があるからかもしれない。