8.『あゝ、荒野』(17) 監督:岸善幸 前篇:157分 後篇:147分
2017年には、出演作が5本公開された菅田。比較的明るい役で、メジャースタジオの作品が続いていたが、のちに『新聞記者』(19)を手掛けてその名を知らしめるスターサンズと『二重生活』(16)に続きタッグを組んだこの逸品を、忘れてはならない。役者・菅田将暉を語るにあたり、必ずと言っていいほど名が挙がる骨太な野心作だ。
2020年の東京オリンピックを終えた日本は、デモやテロが多発する一触即発の空気が充満した国に変貌していた。そんななか、少年院からシャバへと戻ってきた新次(菅田)は、内気な青年・健二(ヤン・イクチュン)と共にプロボクサーの道を歩み始める。
菅田がこれまでの出演作で見せてきた「体内から発散される暴力性」が前面に押し出されており、過密スケジュールのなか肉体改造に励み、ボクサー体型に仕上げてきた努力が実った渾身の試合シーンや、身体と身体がぶつかり合う激しいラブシーンなど、度肝を抜かれるシーンが連続。山田裕貴扮する宿敵との鬼気迫る試合シーンでは、激情が突き抜け、かつてないほどの狂的な熱演にまで到達。菅田の役者としての限界値を、大きく更新させた作品といえるだろう。
復讐心や闘争本能に火がつき、目が座ったような強烈なまなざしで相手を射抜く菅田の存在感は圧巻で、作品を観終えた後にも脳裏から離れることはない。恐るべき才能を見せつけた作品だ。