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『オフィシャル・シークレット』ギャヴィン・フッド監督 真実から逸脱せず、ドラマチックに成立させるよう心がけたよ【Director’s Interview Vol.72】
2003年イラク開戦前夜、英米政府を揺るがせた告発記事。その記事は 英国女性諜報職員キャサリン・ガンのリークだった。実話に基づく、政府VS告発者のポリティカル・サスペンス。本作のメガホンを取ったのは、『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』(09)のようなハリウッド大作から、『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』(15)の社会派作品まで、幅広く手がけるギャヴィン・フッド監督。実話をベースとした本作にどのように対峙したのか、監督に話を伺った。
Index
最初は信頼してもらえなかった、諜報員への取材
Q:本作の監督を務めることになった経緯を教えてください。
ギャヴィン:『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』(15)で一緒に仕事をしたプロデューサーから脚本が届いたんだ。2016年に公表されたジョン・チルコット率いる委員会の「チルコット・レポート(イラク戦争検証報告書)」のように、抽象的でも理論的でもない、具体的な物語に夢中になったよ。
この物語を読んだ時、特定の個人を通した非常に大きな出来事だと感じた。ものすごい状況にはまり込んだ、ごく普通の人間の物語を通して、とても個人的な視点からこの時代を見ていくことができる物語だと思う。しかし、この物語を描くには綿密なリサーチが必要だったから、僕も脚本執筆に加わり、その後1年という時間をかけていろいろ調べたんだ。
Q:映画に登場する当人たちに取材をしたそうですね。
ギャヴィン:まずは主人公となるキャサリン・ガンに直接話を聞きたいと思った。ロンドンへ飛び、毎日4~5時間、5日間にわたり彼女と話した。「最初から話して」と徹底的に取材したよ。
実は彼女がリークしたのはメール1通だけなんだ。ハリウッド映画の視点だと、もっとエキサイティングになるように物事を歪曲しがちだけど、本当に起こったことをありのまま話してほしかった。でも彼女は、私に対して最初は懐疑的だったんだ。信用していいものか、どこまで話すべきか迷っていたようだ。リークしたのはメール1通だと彼女は強調していたよ。ほかの事柄に触れると、公務秘密法違反になるからね。諜報員と話していることを痛感したよ。
ほかにも、キャサリンのリークを記事にした、記者のマーティン・ブライト、彼と同様にこの物語を紐解く重要な鍵となる「オブザーバー」紙のジャーナリストたち、そして弁護士のベン・エマーソンにもインタビューをした。
ベンとは個人的に会い、メールのやり取りをしてかなりの時間を過ごした。ベンは早口で、とても知的に話すから、彼と会うとかなり委縮するんだ。それに彼はばかげた行為をする人間に容赦ないからね。
Q:実際に起きた事件を映画化した本作ですが、映画のテーマを一言で表現するなら?
ギャヴィン:テーマは“あなたならどうする?”だ。職場で衝撃のメールを見たらどうする?内容は違法であり非道だ。多くの業界で起こりうるだろう。いつ声を上げる?職を失うかもしれないし、自由を失う危険もある。共感できる点は多いと思う。