音楽に対するオーダーは、役者への演出に近い
藤井:今話しながら思ったんですが、大間々さんに音楽のディレクションを出すときは、俳優部に演出を付けてるときとちょっと近いんですよね。「このシーンはこういう感情です」「じゃあその感情は“どれぐらい”なんですかね」とか、俳優部に芝居をつけるような塩梅で、チューニングしていく。
そこに気づいてコツをつかんできてからは、すごくやりやすかったですし、楽しかったですね。
Q:音楽の部分にリクエストを伝えるという作業を、藤井さんはどういう風にされているか、とても気になっていました。「脚本の読み込み」が、やっぱりすごく大事なんですね。
藤井:そうですね、組む音楽家さんによってもすごく違うなと思っていて、このシリーズでも僕がよく言っている「映画を自分事化する」ということをやってくれる音楽家は、大間々さんが初めてでした。一緒に作ってる感じが強くしましたね。
普段ご一緒する岩代太郎さんは逆に「監督、僕はこうだと思うんだ」って、自分から読んだ感想をくださって、僕が「なるほど、ありがとうございます!」みたいになるパターンですね。そこから詰めていく形です。
Q:大間々さんは、普段からそのスタイルを標榜しているのでしょうか。
大間々:そうですね。1人で黙々と作るのも好きなんですが、実際の音作りでも、ミュージシャンとセッションして作ることも多いですし、監督とのやり取り含めてチームでやるのが好きですね。その中で、メロディは自分でしっかり考えます。
たとえば音楽のスケッチを作る前に、ミュージシャンたちと2泊3日くらいのスタジオ合宿をするんですよ。そこでいろんな音や、時には楽器を作ったり、まず人を巻き込んでやってみる。
僕はまだキャリアがそんなに長くないので、やっぱり人から引き出してもらう率が高いんですよ。自分でも気付いてないフレージングもありますし、「見つけてもらう」が今、楽しい時期なんです。