映画は、どうやって「作られる」のだろうか?
映画の成り立ちを知れば、作品鑑賞はもっと面白くなる――。そこでCINEMOREでは、「CINEMORE ACADEMY」と題し、映画の作り方をクリエイターに学ぶプロジェクトを“開講”、映画製作の“リアル”をお届けする。
今回、講師に迎えるのは、『新聞記者』(19)で日本映画界に革命をもたらした俊英・藤井道人監督。9月4日公開の最新作『宇宙でいちばんあかるい屋根』を題材に、今回の映画をどのように作ったのか、詳しく伺っていく。
映画が作られていく過程に合わせて「企画編」「脚本編」「プリプロダクション編」「撮影編」「編集編」の5回にわたって話を伺ってきたが、今回の第6回目で、「映画『宇宙でいちばんあかるい屋根』の作り方」はついに最終回を迎える。
最終回のテーマは「音楽編」。藤井監督と前田浩子プロデューサーの黄金コンビに加えて、藤井監督とは初タッグとなる作曲家の大間々昂氏を招き、映画音楽の作り方や思考法を深掘りしていく。
映画になくてはならない「音楽」だが、チームに加わるのは最後のほうという特殊なポジション。しかしそこには、他のスタッフ・キャストに負けないほど、熱い情熱がたぎっていた。
Index
- 初タッグを生み出した、前田Prの計らい
- 藤井監督・前田Pr・大間々氏の「音楽が印象的な映画」
- 監督の過多な指示で、作曲家の個性をなくしたくない
- 監督の「音楽で表現したいもの」を見つけるのが楽しい
- 音楽に対するフィードバックは、自分から取りに行く
- 音楽に対するオーダーは、役者への演出に近い
- 音楽は、映画制作の最後まで携わるポジション
- 既存曲の使用に立ちはだかる、予算という壁
- 清原果耶の主題歌起用に至ったドラマ
- 公開に向けて、今思うこと
初タッグを生み出した、前田Prの計らい
Q:まず、「音楽編」の中身に入る前に、大間々さんに音楽をお願いすることになった経緯と、通常どのタイミングで作曲家にオファーするのかを、それぞれ教えてください。
藤井:今回は、脚本を書いている段階で(前田)浩子さんが、「オススメしたい作曲家がいます。大間々さんって知ってますか」と言ってくれたんです。
僕はちょうど『彼女がその名を知らない鳥たち』(17)の音楽がすごく良かったので、「知ってます!」と答えて、年も近いしぜひぜひということでお会いしました。クランクイン前には、もう大間々さんに決まっていましたね。
Q:そのタイミングで作曲家が決まるのは、通例的には早いのでしょうか。
藤井:そうですね、なかなか決まらないことも結構多くて、撮影中に決まることもありますね。今回は比較的早かったです。
Q:前田さんが、大間々さんを藤井監督にご紹介した決め手は、どういう部分だったのでしょうか。
前田:最初に大間々さんを意識したのは、『愚行録』(17)のマスコミ試写に伺ったときですね。映画を観て、「なんだこのカメラワークと音楽は!」と衝撃を受けたんです。試写後に石川慶監督に「音楽が素晴らしかった」って最初に伝えたら、「そこからですか」って言われちゃったくらい(苦笑)。
それからしばらくして、石原さとみさん主演のドラマ『地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子』(16)を観ていたらすごく可愛い音楽が流れて、「誰が作曲したんだろう?」って調べたら、大間々昂だったんですよ。「え、あの『愚行録』の人がこんなポップな曲を作るんだ」と思って、その後に私の前作『ヒキタさん! ご懐妊ですよ』(19)でご一緒しました。
今回、大間々さんと藤井監督を引き合わせた理由ですが、実は藤井監督は“隠れ心優しい男”じゃないですか、ちょっと隠してますけど。
藤井:(笑)。
前田:年齢も近いし、絶対この2人をお見合いさせたら相思相愛になるって思ったんです。それで藤井監督に提案したら、ぜひぜひって言ってくれて。それが大間々さんにお願いした流れです。
Q:大間々さんは、初顔合わせのときはいかがでしたか?
大間々:藤井さんは『新聞記者』(19)とか硬派な作品が多かったから、ちょっと怖いのかなと思ってビビりつつ行ったら、すごくフランクで若くて話しやすいし優しいし、意外な印象でしたね。
前田:大間々さん、「めちゃめちゃスタイリッシュでカッコいい!」って言ってましたよね。
大間々:作品の先入観に引っ張られた感はありましたが(笑)、でも藤井監督の作品は画がすごく綺麗だったので、会う前からとても楽しみにしていました。
藤井:ありがとうございます。
Q:いきなりの告白で恐縮ですが、僕『愚行録』のサントラ持ってます……。「Bus」という曲が好きで、一時期ループで聴いてました。『彼女がその名を知らない鳥たち』も好きで、ブルーレイを持っています。
大間々:本当ですか。ありがとうございます。
Q:こちらこそです!