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東欧・ロシア映画おすすめ6選:『異端の鳥』に至る、民族と戦争の記憶をたどって
4.『心と体と』(17)ハンガリー 監督:イルディコー・エニェデイ
東欧映画の中でも格別に愛らしく、しっとりと情感に訴えてくるのが、ハンガリーのイルディコー・エニェディ監督によるベルリン国際映画祭金熊賞受賞作『心と体と』。ファンタジックな要素と障害をめぐる切実さが同居し、穏やかなユーモアと意表を突く展開で楽しませる、魅力がたっぷり詰まった珠玉作だ。
ブダペスト郊外の食肉処理場で代理職員として働き始めた若い女性マーリアは、几帳面だが人付き合いが苦手で、職場に馴染めない。片手が不自由な上司の中年男性エンドレは、マーリアのことを気にかけて話しかけるが、ぎくしゃくしてしまう。そんな2人が、「鹿になって森の中で一緒に過ごす」という同じ夢を見ていることを知り、急接近していく。
おそらくはアスペルガー症候群か発達障害を抱えるマーリアが、エンドレとの出会いをきっかけにコミュニケーション能力不足を少しずつ克服しようと努力する姿を、アレクサンドラ・ボルベーイが繊細に表現。端正だが愛らしさも感じさせる顔立ちのおかげもあり、観客はおのずとマーリアの恋と人生を応援したくなる。
エンドレとマーリアが見る夢のシークエンスに登場する雌雄の鹿の“演技”も見事で、CGによる描画を疑いそうになるが、国立公園内に生息する本物の鹿を撮影したと監督が語っている。ハンガリーでは、鹿は先祖をアジアから導いた神獣だという。東欧の人々と動物の心理的距離感の近さが、映画における動物の使い方の巧さに関係しているのかもしれない。
『心と体と』をもっと詳しく:不器用なすべての大人に寄り添う、不思議な恋愛物語