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東欧・ロシア映画おすすめ6選:『異端の鳥』に至る、民族と戦争の記憶をたどって
6.『異端の鳥』(19)チェコ・ウクライナ 監督:ヴァーツラフ・マルホウル
いよいよ、今回の東欧・ロシア映画おすすめ6選を締めくくる最新公開作の出番だ。ポーランド出身で戦後アメリカに亡命した小説家イェジー・コシンスキによる「ペインテッド・バード」を原作とし、チェコ出身のヴァーツラフ・マルホウル監督が11年の歳月をかけて映画化した。
第二次大戦下の東欧のどこか。ホロコーストを逃れて田舎に疎開した少年は、預かり先の一人暮らしの老婆が病死した上に火事で家が焼けてしまい、あてもなく旅に出ることに。行く先々で彼を異物とみなす周囲の人々からひどい仕打ちを受けながらも、なんとか生き延びようと必死でもがき続ける。
ヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門で上映された際には、途中退場者が続出したという。少年への差別と容赦ない暴力、庇護者による虐待、ユダヤ人という理由だけで殺される恐怖……。まるで地獄めぐりのように少年が行く先々で遭遇する過酷な状況が、モノクロ映像の乾いたタッチで描かれていく。
撮影監督は『コーリャ 愛のプラハ』(96)のウラジミール・スムットニー。35mmフィルムとシネスコの画角を採用し、荒涼たる背景を収めたワイドショットから、ステラン・スカルスガルドやハーヴェイ・カイテルら名優たちの皺が深く刻まれた顔のクローズアップまで、圧巻の映像美で観る者を釘づけにする。
コシンスキの原作は1965年に発表されたが、母国ポーランドを含む社会主義圏の多くで発禁になった。半世紀以上を経て映画化が実現したのも、東欧が自由な表現を獲得できたことの表れだろう。
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以上、『炎628』(85)から『異端の鳥』(19)まで、ここ30年ほどの東欧・ロシア映画のおすすめを6本取り上げた。今回は紹介できなかったが、ダニス・タノヴィッチ監督の『ノー・マンズ・ランド』(01)、アンジェイ・ワイダ監督の『カティンの森』(07)、ネメシュ・ラースロー監督の『サウルの息子』(15)、イエジー・スコリモフスキ監督の『イレブン・ミニッツ』(15)なども、同エリアで製作された個性豊かな秀作群に含まれる。年々面白さを増す東欧・ロシア映画の魅力をぜひ満喫していただきたい。
フリーランスのライター、英日翻訳者。主にウェブ媒体で映画評やコラムの寄稿、ニュース記事の翻訳を行う。訳書に『「スター・ウォーズ」を科学する―徹底検証! フォースの正体から銀河間旅行まで』(マーク・ブレイク&ジョン・チェイス著、化学同人刊)ほか。
『異端の鳥』
2020年10月9日(金) TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
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