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『ばるぼら』手塚眞監督 父・手塚治虫の異色作をエロスと純愛にフォーカスし映画化【Director’s Interview Vol.95】

『ばるぼら』手塚眞監督 父・手塚治虫の異色作をエロスと純愛にフォーカスし映画化【Director’s Interview Vol.95】

ばるぼら」は手塚治虫の膨大な作品群の中でも極めつけの異色作だ。流行作家の美倉洋介はある日新宿の雑踏で薄汚れた少女ばるぼらと出会う。彼女と奇妙な共同生活を送るようになった美倉は、自らの「異常性欲」による異形のものとの性愛に翻弄される。そしていつしかばるぼらとの愛欲にとりつかれた彼は、誰も想像がつかない狂気の淵へと自らを追い込んでいく…。


手塚自身が「デカダニズムと狂気」と表現した原作の映画化に挑んだのは、その息子である手塚眞。ビジュアリストとして世界的に評価される手塚眞は父の数ある作品からなぜ「ばるぼら」を選んだのか?まるでキャラクターが憑依したかのような演技で作品世界を構築した稲垣吾郎と二階堂ふみの演技をどのように引き出したのか?


手塚治虫の作品世界の魅力を紐解きながら、本作の裏側を語ってもらった。


Index


手塚漫画の隠れた傑作「ばるぼら」の魅力



Q:「ばるぼら」は「ビッグコミック」(小学館)で1973~74年にかけて連載された作品ですが、当時手塚治虫先生は「人間昆虫記」や「奇子」といった大人向けのマンガをいくつも発表されています。その中から「ばるぼら」を選んだのは何故だったんですか?


手塚:まず、ただ単にストーリーを絵にした漫画ではない、表現の面白さでしょうか。冒頭から不思議な感覚で、良い意味で絵が歪んでるんですよ。ビルがまっすぐ建っていなかったり、何かちょっと抽象的な絵なんですね。


その世界に当時フーテンと呼ばれていたホームレスの薄汚れた少女が出てきて、急に古いフランスの詩を呟いたりする。どこからが現実で、どこまでが幻想なのか全くわからない。もしかしたら全部幻なのかと思わせるところが、すごく好きだったんですね。


他の大人向けの漫画はもっとリアルなんです。「人間昆虫記」にしても「奇子」にしても、こういう話が現実にあっても不思議ではない内容なんですが、それに比べて「ばるぼら」というのは極端に言えば完全にファンタジー。しかも男と女のストーリーという点で、すごくロマンティックだと思うんです。


手塚治虫の漫画って僕はどの作品も基本はロマンティックだと思います。作品によっては科学技術を前面に出したり、宇宙を舞台にしたり、いろんな要素が入ってくるんですが、煎じ詰めるとすごくロマンティックなストーリーが多い。「ばるぼら」はそれが一番よく出ている作品だと思いますね。手塚作品の中ではそれほど知られた作品ではないので、これを機会に読んでもらえるといいなと思います。




Q:原作の「ばるぼら」では「私は異常性欲者だ」と主人公が独白します。どういうことなんだろうと読んでいくと、マネキンや犬とセックスしそうになったり、かなり刺激的な世界観ですよね。


手塚:主人公は「異常性欲」と思ってるけど、よく考えたらそうじゃないって気がしますよ。つまりマネキンだと分かっているのにセックスしようとすれば確かに異常です。でもそうじゃなくて人間だと思っていたら実はマネキンだったっていうのは、幻覚を見ているのに近いんですよね。


Q:映画にはありませんが、原作では、小説の原稿が人間の女性に見えるという話もありました。手塚治虫先生の強烈なイマジネーションに驚きます。


手塚:僕は、別のエピソードを考えたんですよ。車のショールームに主人公が車を買いに行くんです。するとすごい綺麗な車があって、しかも助手席に絶世の美女が乗っている。それで主人公がちょっと恋心を抱いて車に乗り込んで、その女性にさりげなく手を出していくんですね、でもそこで、ハッと気づくと車とセックスしようとしていた、という(笑)。


Q:(笑)それは手塚監督のオリジナルですよね。


手塚:そうそう、僕が考えたんですけど、そのアイデアは撮影しませんでした。



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