将棋のように思考する撮影
Q:映像もすごく印象的でしたが、クリストファー・ドイルさんと監督はどういうところで意見を戦わせたんでしょうか?
手塚:映画のカットをどういう風につないでいくかっていうのは、将棋を指しているような感じなんですよ。ここにこれを打つと、相手はこう来るから、こう打っていこうという感じ。一手間違えると、とんでもない方に行っちゃう。僕は僕で考えている打ち方があって、ドイルさんも独自に考えている。
2人が同じ方向で揃っていると良いんですが、たまに違う方向に行くことがあって、その時はどっちにするか話をしなきゃいけない。1カット撮り方を変えると、その後のプランも全部変わってくるから、時間のかかる作業ですけど、それが面白いところでもある。
あと、すごく専門的な話ですけど、映画には主観的な映像と客観的な映像があるんですよ。主人公の気持ちに立った映像と、お客さんの気持ちに立った映像でカメラの位置が変わる。どっちを選ぶかは感覚でしかないので、どっちもありなんです。それをドイルさんも考えるし、僕も考える。すると同じ時もあれば、真逆にいってしまう時もある。それはもう常に気をつけながらやらないといけないですね。
Q:様々なアングルで同じ演技を繰り返し撮影する方法もありますが、監督はいかがですか?
手塚:僕は割とそういう撮り方もしますし、ドイルさんも好きですね。ただドイルさんは1回撮って自分なりにOK出すと同じことを二度としないんですよ。で僕が同じことをもう1回して欲しいとリクエストしても、全く違う撮り方をしていたりする。
それは要するにドイルさんなりに考えてくれて、後で編集する時にいろんな素材があった方がいいでしょと。わざとひねくれているわけじゃないんです (笑)。