『博士と彼女のセオリー』(14)決して退かない、献身のプロポーズ
ALS(筋萎縮性側索硬化症)と闘った理論物理学者、スティーヴン・ホーキング博士とその妻の数奇な運命をエモーショナルに描いた伝記ドラマ。主演のエディ・レッドメインがアカデミー賞主演男優賞に輝いたほか、共演のフェリシティ・ジョーンズも主演女優賞にノミネートを果たした傑作だ。
大学で出会ったホーキング(エディ・レッドメイン)とジェーン(フェリシティ・ジョーンズ)。理系の物理学専攻と文系の言語学専攻という正反対の分野を専攻する2人だったが、不思議とウマが合い、距離を縮めていく(2人が満点の空の下でダンスするシーンや、「時を巻き戻す」と手をつないでくるくる回るシーンが可愛らしい)。
しかしその後、ホーキングはALSを発症。「余命2年」と診断され、順風満帆だった人生は一変してしまう。自暴自棄になり、「僕にかまうな」とジェーンと距離を置くホーキングだったが、ジェーンは決して諦めない。「愛してるの。あなたと一緒にいたい。たとえ長い時間でなくても、私は構わない」と訴え、ホーキングの心のよりどころとなる。
その後、ホーキングの両親から「現実は君の味方ではない」と反対されても「力を合わせ、この病気と闘わねば。私たちみんなで」と毅然とした態度を崩さないジェーン。たとえ悲劇が待ち構えていようとも、愛の障害にはならない。想いの強さと深さを感じさせる、無二のプロポーズといえるだろう。
生き写しかと見粉うレベルにまで、ホーキング本人に近づけたレッドメインの驚異的な演技に、愛の気高さを体現したジョーンズの妙演が加わり、ヨハン・ヨハンソンの美しい旋律が、心を揺さぶる1本だ。