スタッフの人選に、監督の“狙い”が見えてくる
Q：本作を拝見すると、「こういうファッションをしたい」「こういった髪形にしたい」といった気持ちになれる、ビジュアル面でのお洒落さもすごくあるように感じました。この辺りは、ボンズならではのこだわりなのでしょうか。
南：それはやっぱり、タムラ監督のセンスでしょうね。『ジョゼと虎と魚たち』をアニメーション化したらどんなビジュアルになるだろうなと自分でも思っていたのですが、初期段階で彼の中には明確なイメージがあったんじゃないかな。
だからこそ、シナリオ開発と並行してloundrawさんにイメージボードを依頼したんだと思います。キャラクター原案を担当した漫画家の絵本奈央さんのスタッフィングにも、指向性が見えますよね。
自分もプロデューサーをやるときは、キャラクター原案は色々な方の絵をバッと並べて、吟味するんですよ。今風のイラストから、大御所まで。『キャロル&チューズデイ』（19）の窪之内英策さんも、数多くのイラストを見たうえで「窪之内さんにお願いしたい！」と言って決まったんです。
シナリオの方向がある程度見えた段階で絵本さんにオファーを出したから、タムラ監督のなかで「この人の絵が必要だ！」という想いがあったと思いますね。
美術監督をやっていただいた金子雄司さんは『ひそねとまそたん』（18）のときに初めてご一緒したのですが、基本手描きなんですよ。最終的にはある程度デジタル加工を入れるのですが、筆ならではの温かみを出せる人です。
先日、本作の舞台である大阪に行ったら、現地の方々が「大阪をちゃんと描いてくれてる」と言ってくださって。ただ、絵自体はリアリティよりは全体の雰囲気を捉えて描かれています。事細かに描いているわけじゃないのにそういった感想をいただけるあたり、「やっぱり金子くんはすごいな」と思いましたね。そういった形で、パートごとにちゃんと計算して、タムラ監督が配置していると感じます。
Q：なるほど。おっしゃる通り、ビジュアルセンスの高い方々が集結した作品ですよね。
南：ボンズとしては、監督の中に確固たるイメージがあればあるほど、どうやったらベストな形で映像に定着させられるかを考えます。一生懸命、現場のスタッフたちが頑張ってくれました。
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