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『ロード・オブ・カオス』ジョナス・アカーランド監督 若者たちの関係性を描くことで音楽史上最も凶悪な事件の真実に迫る【Director’s Interview Vol.110】
彼らは本当に悪魔を崇拝していたのか?
Q:主人公のユーロニモスは悪魔崇拝をアピールすることで、バンドの人気を飛躍させていきますが、彼は本気で悪魔を信仰していたのでしょうか。
アカーランド:悪魔崇拝や政治的な主張を、彼らは本気で考えていたわけではないと思います。なぜなら、悪魔崇拝に加えて、スターリンやナチスといったモチーフも彼らは織り交ぜていて、支離滅裂なんです。彼らはそういったシンボルをショッキングなイメージとして使っていただけなのではないでしょうか。
そういった邪悪なイメージで自分たちの音楽をプロモートしていたわけで、実際、政治的主張があったり、凄く宗教的だったりしたわけではない、というのが私の意見です。
『ロード・オブ・カオス』(c) 2018 Fox Vice Films Holdings, LLC and VICE Media LLC
Q:本作は、音楽を志した3人の青年の友情の芽生えからそれが崩壊するまでを、ロックバンドを背景に描く王道の青春映画だと感じました。監督はどういう風に捉えてらっしゃいますか?
アカーランド: そうですね。たしかに典型的な青春映画と言えるかもしれません。ただ他の作品と大きく違うのは、ちょっと行き過ぎてしまった。つまり友達を実際に殺害してしまうというところでしょう。
なぜヴァーグが殺人を起こしたのか、私は今でもわからないんです。ヴァーグは今もインタビューで色々と事件について語っています。でもその記事を読んでも、彼の殺人の動機は誰にも分からないのではないでしょうか。この作品を見て、なぜそんな酷いことが起こったのか、観客の皆さんがそれぞれ解釈してくれれば良いと思います。
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監督:ジョナス・アカーランド(ヨーナス・オーケルンド)
1965 年11月10日生まれ。スウェーデン出身。83~84 年、ブラック・メタルの父ともいえるバンド「バソリー」のドラマーとして活躍。キャンドルマスの「Bewitched」(88)で MV 監督デビュー。98 年マドンナの「Ray of Light」でグラミー賞 最優秀短編ミュージック・ビデオ賞を初受賞。その後、マドンナの「The Confessions Tour」(07)でグラミー賞最優秀長編ミュージック・ビデオ賞を、ポール・マッカートニーの「Live Kisses」(13)でもグラミー賞最優秀ミュージック・ビデオ賞を受賞。本作で音楽を担当したシガー・ロスをはじめ、オジー・オズボーン、ポール・マッカートニー、ローリング・ストーンズ、レディー・ガガなどの MV 監督として活躍。また、本作の撮影中にメタリカのラーズ・ウルリッヒから仕事の依頼があり、急遽メタリカの「ManUNkind」(16)のMVが『ロード・オブ・カオス』の映像とキャストで制作された。その後、『SPUN/スパン』(02)で映画監督デビュー。その後も『ホースメン』(09)、『スモール・アパートメント ワケアリ物件の隣人たち』(12)、「ポーラー狙われた暗殺者」(19)などを手掛ける。 名前の正式な読みは“ヨーナス・オーケルンド”だが、日本では、ジョナス・アカーランドとして知られている。
取材・文: 稲垣哲也
TVディレクター。マンガや映画のクリエイターの妄執を描くドキュメンタリー企画の実現が個人的テーマ。過去に演出した番組には『劇画ゴッドファーザー マンガに革命を起こした男』(WOWOW)『たけし誕生 オイラの師匠と浅草』(NHK)『師弟物語~人生を変えた出会い~【田中将大×野村克也】』(NHK BSプレミアム)。
『ロード・オブ・カオス』
2021年3月26日(金)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほかにてロードショー!以降順次公開
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