(c) 2018 Fox Vice Films Holdings, LLC and VICE Media LLC
『ロード・オブ・カオス』ジョナス・アカーランド監督 若者たちの関係性を描くことで音楽史上最も凶悪な事件の真実に迫る【Director’s Interview Vol.110】
今から30年近く前、ノルウェーで勃興したブラックメタル。コープスペイントと呼ばれる白塗りメイクと、禍々しいボーカルやリフは衝撃的だったが、それにもましてメンバーたちのサタニズム(悪魔崇拝主義)がセンセーショナルにクローズアップされた。その中心的バンドだった Mayhem(メイヘム)のメンバー、ユーロニモスは、ショットガンで自殺したメンバー、デッドの写真を撮影し、もう一人の中心メンバー、ヴァーグは何件もの教会に放火。あげくのはてに、殺人事件を起こす…。
音楽史上最も凄惨で謎に包まれたこの事件を映画化したのは、マドンナやローリング・ストーンズなど、名だたるアーティストのMVを監督してきたジョナス・アカーランド。彼は、この事件を起こしたメンバーたちと同時代に、ブラックメタルバンドBathory(バソリー)のドラマーとして活躍した経歴の持ち主。そんな同じ時代の空気を吸った彼はなぜ、この事件を30年越しに映画化しようとしたのか。
さらにリアルさに拘った当時の風俗や殺人事件はいかにして再現されたのか、その秘密を語ってもらった。
Index
- 若者たちの関係性から浮かび上がる事件の真相
- 役から抜け出せなくなったロリー・カルキン
- 80~90年代のノルウェーのメタルシーンを徹底再現
- 警察の調書まで読み込んで再現した殺人シーン
- 彼らは本当に悪魔を崇拝していたのか?
若者たちの関係性から浮かび上がる事件の真相
Q:今から30年前近く前の事件を、なぜ今映画化しようと考えたのでしょうか?
アカーランド:この映画の製作が正式に決まる15年ほど前から、映画化したいという思いをずっと持ち続けていました。様々な要因で、たまたま公開が今年になってしまったんです。
ただ、今になって考えると、逆に15年前に製作しなくて良かったと思います。この事件に関する自分なりの視点や解釈が、年を経るごとに変わってきたので、今このタイミングで映像化できて良かったと思っています。
『ロード・オブ・カオス』(c) 2018 Fox Vice Films Holdings, LLC and VICE Media LLC
Q:視点の変化とは、具体的にどんなものでしたか?
アカーランド:この何年かで自分自身も成長し、事件に対する見方が大分変わりました。年月が経つにつれて、このストーリーは3人の青年たちの、関係性についての話なんだ、と理解するようになったんです。
もちろんブラックメタルとかサブカルチャーだとか、そういうことにも興味はあるのですが、一番重要だと思ったのは、3人の若い「男の子」たちが、どのような人間関係を構築していたか、ということ。そして、それを描くことが必要だと思いました。
彼らは中流家庭で何不自由なく育ち、素行不良でもなく、ドラッグの常習者でもありませんでした。そんな彼らが、なぜあのような凄惨な事件を起こしたのか。それを彼らの関係性から浮かび上がらせようと考えたんです。