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『ロード・オブ・カオス』ジョナス・アカーランド監督 若者たちの関係性を描くことで音楽史上最も凶悪な事件の真実に迫る【Director’s Interview Vol.110】
警察の調書まで読み込んで再現した殺人シーン
Q:北欧の空気が伝わる、寒々しい風景も印象的ですが、撮影は劇中の設定と同じノルウェーで行ったんですか。
アカーランド:本作は、たった18日で撮影しましたが、そのうちノルウェーで撮ったのは2日間だけでした。ほとんどのパートはハンガリーのブダペストで撮影しています。
Q::ハンガリーで撮った理由はなんですか?
アカーランド: ハンガリーで撮る方がノルウェーよりとても安く済むからです。 本当は全編ノルウェーでロケをしたかったんですが、ノルウェーは物価が高すぎました。だからユーロニモスが経営するレコードショップや、放火する教会などは全てブダペストで準備しました。でもさすがに街並などの撮影はノルウェーでやっています。
Q:18日というと、かなり短期間の撮影です。監督が特に苦労したシーンはありますか?
アカーランド:一つは教会の放火シーンです。私は本当にリアルに見せたかったので、燃やすために教会を建てました。放火シーンもマッチとガソリンを使って実際に火をつけています。やり直しができないシーンなので難しかったです。
『ロード・オブ・カオス』(c) 2018 Fox Vice Films Holdings, LLC and VICE Media LLC
もう一つは殺人シーンです。大きく2つの殺人シーンがあるんですが、特に最後の殺害シーンはとても長くて大変でした。現場の床は冷たく、大量の血のりで滑りやすかったので、俳優たちは特に苦労したと思います。どのタイミングで流血させるか、といった技術的な難しさもあったので、18日の撮影期間のうち、2日間はその殺人シーンに費やしてしまいました。
Q:最後の殺人シーンはとても衝撃的なのですが、その禍々しいリアルさは、ウェス・クレイヴン監督の『鮮血の美学』(72)を想起しました。先行作品で意識したものはありますか?
アカーランド: (笑)ウェス・クレイヴンはとても好きなので、彼の作品と比べられるのは光栄です。しかし、そういったホラー映画などにインスパイアされたということはありません。 ホラー映画的な「怖い」という見せ方をしていないはずなんですが、映画館で上映した時の観客のリアクションはまるでホラー映画を見てるようでした。思わず目を覆って怖がっている人もいましたね。
当時のT シャツや音楽をリアルに再現したように、殺人シーンについても本当にリアルさを一番重視しました。殺人現場の写真や警察のレポートで、ナイフで実際にどこを何回刺した、といった事実を何度も調べ、リアルさを追求して事件に忠実に作りました。その結果が、あなたが感じた禍々しさにつながったのだと思います。