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『パーム・スプリングス』マックス・バーバコウ監督 この物語を描いてから、誰かと恋に落ちたり、心を開くことを理解できるようになったよ【Director’s Interview Vol.114】
ヴェルナー・ヘルツォークのワークショップで学んだもの
Q:監督の経歴に、キューバでヴェルナー・ヘルツォークから映画を学んだとあるんですが、いったいどういう状況でヘルツォークに学んだんでしょうか?
バーバコウ:IndieWireという映画サイトに、映画製作のワークショップの応募を見たんだ。世界中の映画作家をキューバの映画学校に集めて短編を作るという企画で、講師役がヴェルナー・ヘルツォークだった。僕は50人の参加者のひとりに選ばれて、ヘルツォークは「ジャーナリズムでなければどんなジャンルでも構わない、5分の短編を作れ」とお題を出して、数週間、僕らと一緒に過ごしてくれた。
彼みたいな人物と一緒にいると、彼独特の、映画や世界に対するものの見方がじわじわと浸透してくるんだ。そして僕らのオリジナリティを尊重して、後押しをしてくれた。特に教わったのは「考えすぎるな」ということだった。その場その場の状況に身をおいて、即興的にシナリオを生み出したり、コラボしてくれる人たちと協力して、詩的かつ奇妙な瞬間を見つけることが大切だとね。
彼の教えは『パーム・スプリングス』の現場ではすごく役に立ったよ。撮影期間はとても短くて、すべてをスピーディに進めないといけなかったからね。現場ではひっきりなしに不測の事態が起きるものだけど、何が起きてもプレッシャーに感じることなく、作品に活かすことができた。オープンな気持ちでいれば、アクシデントだってハッピーなものになるんだよ。
『パーム・スプリングス』(c)2020 PS FILM PRODUCTION,LLC ALL RIGHTS RESERVED.
Q:『パーム・スプリングス』の配給権がサンダンス映画祭の史上最高額で売れたときの気持ちを教えて下さい。あと『Birth of Nation』より69セントだけ高い額だったのは、話題作りを見越したマーケティング戦略だったんでしょうか?
バーバコウ:あの金額はHuluが決めたんだ。いや、嘘、冗談。あれはプロデューサーのアキヴァ・シェイファー(『俺たちポップスター』(16)の監督)が思いついたんだ。僕らは幸運にも記録を更新できるポジションにいて、69セント高いっていうアイデアは、朝4時の僕らの頭だと最高に思えたんだよね(笑)。
ただ、僕はそんな額で売れるなんて想像もしてなかったし、映画祭に出品できただけでハッピーだった。作品を完成させて、何かを成し遂げることができたわけだからね。だからこの映画で僕が学んだことは、期待は脇に置いておいて、目の前の仕事に集中するべきだってこと。結果、素晴らしい体験になったし、本当に楽しかった。