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『パーム・スプリングス』マックス・バーバコウ監督 この物語を描いてから、誰かと恋に落ちたり、心を開くことを理解できるようになったよ【Director’s Interview Vol.114】

(c)2020 PS FILM PRODUCTION,LLC ALL RIGHTS RESERVED.

『パーム・スプリングス』マックス・バーバコウ監督 この物語を描いてから、誰かと恋に落ちたり、心を開くことを理解できるようになったよ【Director’s Interview Vol.114】

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影響を受けたマイク・ニコルズ作品



Q:アンディ・シアラさんとはアメリカンフィルムインティチュートで出会って以来の仲だそうですが、創作する上での役割分担はどうなっているんでしょうか?


バーバコウ:分担というよりも、限りなく融合していたと思う。例えば僕らはどちらも、コメディとシリアスを組み合わせようとしていた。片足は墓場に突っ込んで、もう片足はバナナの皮を踏んでるみたいなね。泣かせるシーンの後にバカげたスラプスティックな場面が続くような映画を作ろうという方向性で一致していた。


実際、この企画は完全に僕たちふたりで始めたもので、誰かに注目されているわけでもなかったから、とにかく僕たち自身が楽しめて、僕らみたいな観客が親しみを感じてくれるようなものを作りたいと思っていた。僕は何かを作る時に「誰かのために」と考える方がやりやすいタイプなんだけど、今回に関しては完全にアンディのためだった。お互いを笑わせたり、感動させたりすることが一番の目的だったんだ。アンディは違う仕事があって撮影現場にはいられなかったんだけど、アンディと目指したフィーリングに常に忠実であろうと心がけていたよ。


Q:初期の脚本では、まだタイムループのようなSF要素はなかったそうですね。


バーバコウ:脚本の3稿か4稿くらいまでは、『リービング・ラスベガス』(95)をバカっぽくしたようなバージョンを想定してたんだ。自殺願望のある男が、死ぬ前に砂漠でパーティーを開こうとするというプロットだった。映画の真ん中に30分くらいの長いシーンがあって、主人公が70代の女性たちが沈黙の行をしているコミュニティに迷い込んで、サイレント映画みたいな場面が延々と続くはずだったんだ(笑)。内容はだいぶ変わったけど、パーティーの映画であることは同じだから、脇のキャラクターの多くはそのまま結婚式の参列者として登場させているよ。



『パーム・スプリングス』(c)2020 PS FILM PRODUCTION,LLC ALL RIGHTS RESERVED.


Q:女性の脚越しに主人公を映す構図や、ナイルズがプールに浮かんでいる俯瞰ショットなどは、マイク・ニコルズ監督の『卒業』(67)へのオマージュでしょうか? コミュニケーションの難しさというテーマも共通しているように思いますが。


バーバコウ:間違いなく『卒業』からは大きな影響を受けてるよ。日焼けしたような画調とか、フレーミングとか、ミッドセンチュリーモダンな建築とか色調整とか、ビジュアル面においてすごく参考にさせてもらった。マイク・ニコルズは、実際のロケーションをコンセプトに組み込んで、人間の隔絶や疎外感を描き出す名人だと思う。


形式としてはコメディで、ジョークを通じてキャラクターの孤独やエキセントリックな部分を浮き彫りにするという意味でも、『卒業』から多大な影響を受けていると思うんだけど、実はプールのシーンは本当に無意識だったんだ。後から考えたらまんま『卒業』だよね(笑)。


『卒業』と『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない』(66)のクライテリオン版DVDには、マイク・ニコルズとスティーヴン・ソダーバーグの対談コメンタリーが収録されているんだけど、素晴らしい内容で、何度も繰り返し聴いたよ。途中で寝落ちしたこともあったけど(笑)。




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