未来に向けての期待
Q:デビューから40年近く、永瀬さんは国内外の映画の第一線を駆け抜けて来られましたが、その40年近い映画界の紆余曲折の歴史を踏まえた上で、近年の日本映画の動向についてどう感じていますか?
永瀬:僕がデビューしたときから考えると、今は信じられないような状況になっていますよね。80年代から90年代前半くらいまでは、日本映画がなかなか苦しい時期でしたし、当時はデジタルではなくフィルム撮影だったので、次から次へと映画を撮れるような状況ではありませんでした。前作を撮ってから10年くらい新作が撮れていない監督とかたくさんいましたね。
そういう意味では、今はスマホでも映画が撮れる時代になってきたので、映像表現としては間口がすごく広がっている。それはとても喜ばしいことだと思います。言ってしまえば小学生でも作品を撮れる時代なので、役者さんや異業種の方含めていろんな方がチャレンジできる。だから未来に対してはすごく期待しています。
ただ、手軽に撮れることが主流になるのはちょっとだけ反対の部分もあって、やはりキャリアに関係なく、素晴らしい脚本や監督、未来へ向けてチャレンジしていくんだ!という現場には、お金も時間もちゃんとかけて欲しいなとも思っています。
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永瀬正敏
1966年宮崎県出身。オーディションで抜擢された『ションベン・ライダー』(1983/相米慎二監督)で映画デビュー。『息子』(1991/山田洋次監督)で日本アカデミー賞新人俳優賞・最優秀助演男優賞他、合計8つの映画賞を受賞。その後日本アカデミー賞は、優秀主演男優賞1回、優秀助演男優賞2回受賞。 海外作品にも多数出演し、カンヌ国際映画祭・最優秀芸術貢献賞『ミステリー・トレイン』(1989/ジム・ジャームッシュ監督)、ロカルノ国際映画祭・グランプリ『オータム・ムーン』(1991/クララ・ロー監督)、リミニ国際映画祭グランプリ、トリノ映画祭審査員特別賞『コールド・フィーバー』(1995/フレデリック・トール・フレデリクソン監督)では主演を努めた。台湾映画『KANO』(2015/馬志翔監督)では、金馬奨(台湾アカデミー賞)で中華圏以外の俳優で初めて主演男優賞にノミネートされ、『あん』(2015/河瀨直美監督)、『パターソン』(2016/ジム・ジャームッシュ監督)、『光』(2017/河瀨直美監督)で出演作がカンヌ国際映画祭に3年連続で公式選出された初のアジア人俳優となった。近作は『ある船頭の話』(2019/オダギリジョー監督)、『カツベン!』(2019/周防正行監督)、『ファンシー』(2020/廣田正興監督)、『二人ノ世界』(2020/藤本啓太監督)、イラン・日本合作『ホテルニュームーン』(2020/筒井武文監督)、『星の子』(2020/大森立嗣監督)、マレーシア・日本合作『Malu 夢路』(2020/エドモンド・ヨウ監督)、『BOLT』(2020/林海象監督)、『茜色に焼かれる』(2021/石井裕也監督)など。2018年芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。
取材・文: 香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
Photo:Yusuke HASHIMOTO
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2021年6月11日(金) よりシネマート新宿ほか全国公開
(c)2021 『名も無い日』製作委員会