ネビュラ賞、ヒューゴー賞、世界幻想文学大賞で、史上初の3冠に輝いた、中国生まれのアメリカ人作家、ケン・リュウ。そんな彼の短篇「円弧(アーク)」が、この度日本で映画化された。手がけたのは『愚行録』(17)『蜜蜂と遠雷』(19)で非凡な才能を見せつけた、石川慶監督。そして、主人公である17歳から100歳以上の一人の女性を見事に体現したのが、今回の主演を務めた芳根京子だ。
芳根の凛とした熱演は素晴らしく、石川監督が描き出す世界を力強く牽引する。本作で芳根は、石川作品の新たなミューズとなったと言っても、過言では無いだろう。そんな抜群のコラボレーションを見せた二人に話を伺った。
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「最高のスタッフを集めました」
Q:まず石川監督にお伺いしたいのですが、今回の主演に芳根さんを指名した理由を教えてください。
石川:芳根さんとはドラマでご一緒したことがあって、そのときの役がすごく良かったんです。当時の撮影日数は短かったので、いつか時間をかけて一緒に何か作りたいと思っていました。
今回の企画では、一人の女性の17歳から100歳以上までを描く必要があるのですが、上の世代の方に若い役を演じてもらうのではなく、実年齢に近い22~3歳くらいの方に演じてもらって、そこから少しづつ年齢を上げていこうとしたんです。そう考えたときには、もうこれは芳根さんしかいないなと。
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Q:芳根さん一択だったわけですね。
石川:そうですね。でも最初のオファーでは、振られちゃいました(笑)。
芳根:(笑)今の自分には力不足ですと、最初はそうお伝えしたんです。でも石川さんは、そのときの私をすごく受け止めてくださって、ちゃんと話を聞いてくれました。後日、「最高のスタッフを集めましたから」と言ってくださって、思わず「ずるいなぁ」って思いました(笑)。そんなこと言われたら断れないですよね。
でも、こんなに必要としてもらえるなんて、これ以上の喜びはないなとも思いました。役者のお仕事は必要としてもらわないと出来ないので、これほど求めてもらえることが、果たして今後あるのだろうかと。不安は大きかったのですが、石川さんとだったら大丈夫だろうと、飛び込んだ部分もありますね。