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『Arc アーク』原作者ケン・リュウ 日本での映画化に感動! 時代を超越した、まったく新しいSF作品の誕生【CINEMORE ACADEMY Vol.18】

©2021映画『Arc』製作委員会

『Arc アーク』原作者ケン・リュウ 日本での映画化に感動! 時代を超越した、まったく新しいSF作品の誕生【CINEMORE ACADEMY Vol.18】

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「ブレイキング・バッド」の「視点」は参考になる



Q:小説の映画化とは逆に、あなたが作品を執筆するうえで、「映画」に影響を受けている部分はありますか?


リュウ:小説家に限らず、私たちは「目にしたもの」から多大な影響を受けています。だから私も物語を書くうえで、これまで観た映画やドラマから無意識にヒントをもらっているでしょう。ただ、私のポリシーとして、既存の作品への反抗心があります。だから何か作品を観て、そのテーマを気に入った場合でも、まったく違うアプローチでそのテーマを描こうと決心するのです。


 ©2021映画『Arc』製作委員会


Q:何か刺激を受けた作品として、具体的なタイトルを挙げてください。


リュウ:そうですね……。難しいですが、強いて挙げるなら、ドラマの「ブレイキング・バッド」(08-13)でしょうか。作家の立場から観ると、「物語の視点」がとても面白いからです。洗濯機の中や、シャベルの先の穴、車のトランク、あるいはバッグの中からという奇妙な視点の映像が出てきますよね。「これはどの人物の視点なのか?」と考えさせられ、観ている側の意識は不安定になっていきます。こうしたスタイルは、作家としても勉強になります。いい意味で読者を惑わせ、あらぬ方向へ物語を進める方法を模索できますから。


Q:最後に、この1年間、世界中の人々がコロナの影響に苦しんできましたが、あなたの生活は変わりましたか?


リュウ:じつはこのパンデミックの間、書く意欲が減退しました。コロナが人間の本性の醜い部分をさらけ出したことで、楽観的な未来の物語が書きづらくなったからです。たとえばエイリアンが地球侵略のために襲来しても、人類が力を合わせて対抗するなんて、今は夢物語だと感じるはずです。ある国は先頭に立って戦っても、別の国は他国を陰謀で陥れようとしたり、国内で内紛が起こったり……。そもそも人間が集団で生きていることが脅威になってしまったわけで、コロナのパンデミックは、そういう現実を浮き彫りにしたと感じます。人類に対する私の理想が崩れた感覚ですね。


Q:かなり人類の未来に悲観的ですね。


リュウ:でも未来への希望が失われても小説を書き続けられるとは思います。今は悲観的かもしれませんが、私の場合、根本は楽観主義者なので……(笑)。



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© Lisa Tang Liu


原作・エグゼクティブプロデューサー:ケン・リュウ

1976年、中華人民共和国甘粛省生まれ。弁護士、プログラマーとしての顔も持つ。2002年、短篇「Carthaginian Rose」でデビュー。11年に発表した短篇「紙の動物園」で、ヒューゴー賞・ネビュラ賞・世界幻想文学大賞という史上初の3冠に輝く。その後も精力的に短篇を発表するかたわら、劉慈欣「三体」など中国SFの英語翻訳も積極的におこなっている。



取材・文: 斉藤博昭

1997年にフリーとなり、映画誌、劇場パンフレット、映画サイトなどさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。Yahoo!ニュースでコラムを随時更新中。




『Arc アーク』

6月25日(金)全国ロードショー

配給:ワーナー・ブラザース映画

 ©2021映画『Arc』製作委員会

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