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『殺人鬼から逃げる夜』クォン・オスン監督 映画の魅力にハマったのはジェームズ・キャメロンとリドリー・スコット【Director’s Interview Vol.143】
一晩中追いかけてくる殺人鬼。逃げるのは、聴覚に障がいを持った母娘。音が聞こえない、声を出せないという状況を、あらゆる映像手法で視覚化。これでもかと追いかけ続ける犯人同様、多彩なアイデアを駆使してサスペンスを生み出し続ける監督の手腕には、驚くばかりだ。
本作を手掛けたのは、何とこれが長編映画デビューのクォン・オスン監督。クォン監督が映画の魅力にハマるきっかけとなったのは、ジェームズ・キャメロンとリドリー・スコット。それも本作を観ればとても理解できる。そんなクォン監督に話を伺った。
Index
音の視覚化、危機の視覚化
Q:「音が聞こえない」という状況が、あらゆる手法を持って様々に可視化されますが、そのアイデアはどこから来ているのでしょうか。
クォン:本作を作ることになったきっかけは、カフェで違う作品の脚本を書いていた時に、手話で話している二人の聴覚障がい者を偶然見かけたことでした。大声で騒いでいる他の客に囲まれた二人の姿をじっと見守っているうちに、その二人の静けさの中に妙に吸い込まれていくような錯覚に陥ったのです。二人が交わす静かな会話は、他の誰よりも鮮烈に感じられました。同時に、多くの人たちの中で孤立しているようにも見えました。
『殺人鬼から逃げる夜』©2021 peppermint&company & CJ ENM All Rights Reserved.
その後、その経験を土台にして新たな脚本を書き始めました。一夜に起きた事件として構成し、物語を完成させたんです。
また、映像化するにあたっては、音の視覚化、危機の視覚化が必要でした。資料調査をする中で、聴覚障がい者のための道具があることを知り、それらをもとに映画的な想像力を加味して、各種シグナルや動くものを表現しました。