© 2019 Haut et Count Razor Films Produktion France 3 Cinema visa n° 150 076
『悪なき殺人』ドミニク・モル監督 愛と欲望は切り離せないのでしょうね【Director’s Interview Vol.167】
原題『動物だけ』に込められた意味
Q:時系列を変えて異なる視点で展開する構成をとっていますが、5つの視点を2時間弱で描いていることもあり、非常にテンポが良くて伏線回収も分かりやすかったです。脚本や編集など映画の全体構成で気をつけたところはありますか?
モル:脚本を書く時も編集する時も、リズム良く見せることを常に心がけています。今回は視点を変える構成となっていますが、観客の集中力が途切れないように気をつけました。
映画が始まって第1章から第2章に変わるタイミングで、「なんだ、これは?」と、観ている人は不意をつかれると思います。章ごとにそれを繰り返すことによって、この映画の構造を理解させつつ、うまく期待感を抱かせたい。より引き込まれるような作りを意識しました。
それでもやはり、全体的なバランスを取るのは難しいですよね。特にそれぞれのパートで「何を見せて、何を明かしていくのか」には苦労しました。またそれに加えて、登場人物に対して「いかに共感を抱いてもらうか」を織り込んでいくことも難しかったです。
『悪なき殺人』© 2019 Haut et Count Razor Films Produktion France 3 Cinema visa n° 150 076
Q:『Seules les bêtes』(映画原題:動物だけ)のタイトルが象徴するように、映画の中には色んな動物がさりげなく登場しています。タイトルにはどんな意図が込められているのでしょうか?
モル:『動物だけ』は原作と同じタイトルです。すごく謎めいていますよね。原作を読むと、登場人物たちが牛や羊、犬を飼っていたりするので、最初は「動物だけが真実を知っている」という意味だと思っていました。ただそれが正解かどうか確信を持てなかったので、原作者に確認したんです。すると、飼っている動物の主人への愛し方が、タイトルの起源だということでした。人は人を愛する時に何かしら見返りを求めてしまう。一方で動物は何も見返りを求めず、ただただ愛するだけ。そこの対比がこの「動物だけ」というタイトルに表現されているんだと。
この意味は、説明を受けない限り絶対に分からないですよね。ただその謎めいた部分がとても気に入ったので、そのまま映画のタイトルでも使用したんです。