日本語劇場版『サンダーバード５５／ＧＯＧＯ』構成担当：樋口真嗣　再現にかけた愛を感じて欲しい【Director’s Interview Vol.172】

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2022.01.06香田史生

汗をかく⁉︎ 表情豊かなキャラクターたち

Q：パーカーが額に汗をかいていたり、手のアップは実写になったりと、演出も斬新でユニークでした。

樋口：ピンチになった人はいつも汗をかいてましたね。また、スイッチをいじるアップなんかは人間の手が映ってました。小学校で手だけマネしたりしてましたね。ちなみに今回は足も本物が出てきます（笑）。

Q：汗をかかせるほど、キャラクターたちは表情豊かに演出されていますね。

樋口：キャラクターの話で言うと、今回はぺネロープがいちばん魅力的に見えましたね。子供の頃見ていた時は、ぺネロープってどんな人なのかよく分からないんですよ。黒柳徹子さんが声をやっていたのですが、ヒロインとも違うし、かといって母親の年でもない。「なんだろう、あの人は」みたいな、モヤモヤしたものがずっとあったんです。

でもいつの間にか、自分自身がぺネロープの年齢をはるかに超えて、どちらかと言うとトレイシー家の家長位のジェフぐらいの年齢になってしまった。そこで大人になって初めて分かるんです。ぺネロープの良さが（笑）。ぺネロープが悪役のフッドに捕まってひどい目に会う時なんて、もうドキドキするんです（笑）。

Q：今回のペネロープを演じたのは、満島ひかりさんでしたね。

樋口：令和の世の中で黒柳徹子を継承できるのは彼女しかいない。憑依型の人なので、多分黒柳さんが降りて来てるんじゃないですかね。しかも今の黒柳さんではなく、若い頃の黒柳さんが。

Q：サンダーバードでこのジャンルに目覚めてしまった人たちへ、おすすめする作品を教えてください。

樋口：オリジナルの『サンダーバード劇場版』（66）などは、やっぱり大作なので是非見てもらいたいですね。特にもう1本の劇場版『サンダーバード6号』（68）の冒頭なんてすごいですから。サンダーバード6号をスポンサーの前で発表する会議の場面があるのですが、そこで「サンダーバード6号はこれです！」と言ったら複葉機が出てきて、それを皆が大笑いするんです。何とそのシーン用に、大笑い専用の人形が作られていて、「これがサンダーバード6号⁉︎ あっはははー」って全員がゲラゲラ笑い出すのですが、笑いながら、ヨダレや涙が、さっきの汗と同じ手法で流れるわけです（笑）。その悪夢のようなシーンはおすすめですね。

その後に「キャプテン・スカーレット」（67）があって、「ジョー90」（68）があって、「謎の円盤UFO」（70）になるという流れなのですが、人形がリアルになればなるほど人間に近づいて行くという、その感じもぜひ見ていただきたいなと思います（笑）。

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樋口真嗣（ヒグチシンジ）　映画監督・特技監督

（日本語劇場版『サンダーバード５５／ＧＯＧＯ』構成担当）

1965年9月22日生まれ。1984年『ゴジラ』の怪獣造形に携わることで映画界入り。95年『ガメラ　大怪獣空中決戦』で特技監督を務め、『エヴァンゲリオン』シリーズなど数多くのヒット映画作品に画コンテやイメージボードとして参加。主な監督作品は『ローレライ』、『日本沈没』、『のぼうの城』、『進撃の巨人2部作』など。『シン・ゴジラ』では第40回日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞、同作で総監督の庵野秀明とともに最優秀監督賞を受賞。

取材・文：香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ　魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。