「謎の円盤UFO」へのオマージュ
Q:映画の冒頭に出てくるメイキングでは、昔の映像をスキャンして3D化した上で、カメラ距離を測っているのがすごいなと思いました。再現への執念を感じます。
樋口:再現の仕方が今時ですよね(笑)。本来ああいうメイキングは、宣伝用資料として使うものなのですが、自分は映画自体に使いたくて取り寄せてもらったんです。あれを作っている行為そのものが、この物語の一部なんじゃないかなと思うんですよね。
Q:本編を観ていると、古い作品のデジタルリマスターなのかと錯覚します。まさか新作で作っているとは思わない。確かに冒頭で説明しないと分からないですよね。
樋口:自分も最初はそうだったんです。知り合いのやっている飲み屋のモニターに今回の新作が流れていて、それが視界の片隅に入りながら飲んでたんですけど、でもどうしても気になるんです。だって見たことないエピソードが流れているから。DVDボックスも持ってるし、全部通して何回も観ているので、「見落とした回、あったかなぁ」「似たような話が多いから、混同しているのかな」ってずっとモヤモヤしてたんです。それで勇気を振り絞って店の人に聞いたら、そこで初めて新作だと分かった。そのくらい騙されるほど、完成度としては申し分ない。
でもその完成度の高さがむしろ間口を狭めていると思うので、今回の作品は新作であるという情報を共有した上で、物語に入ってもらいたいんです。
『サンダーバード55/GOGO』Thunderbirds ™ and © ITC Entertainment Group Limited 1964, 1999 and 2021. Licensed by ITV Studios Limited. All rights reserved.
Q:先ほどお話にもありましたが、途中のアヴァンタイトルで「謎の円盤UFO」へのオマージュが出てきます。ここは日本オリジナルということですが、とすると、タイプライターのカットは撮影したということでしょうか?
樋口:そうです。同じタイプライターを探して来て撮影しました。当時のIBMの電子タイプライターを持っている方がいて、それをお借りしたんです。だからあそこは、日本だけの新作カットですね。
Q:撮影までして「謎の円盤UFO」を入れたかったとは、相当な思いがあったんですね。
樋口:本当に個人的な話で申し訳ないんですけど、ナレーションの矢島正明さんとどうしても一度仕事がしたかったんです。矢島さんは御年89歳でいらっしゃるのですが、是非今回お願いしたいと、各方面にご迷惑をかけながら実現しました。もはや作品を私物化してますね(笑)