欠かせないバリー・グレイの音楽
Q:サンダーバードのメカの見せ方には革新的なところがあったのでしょうか?
樋口:災害現場は、火の海になってたり、墜落しそうだったりと、一刻も早く助けが必要な状況なんですが、その割には発進するまでがやたらのんびりしている。演出的に考えると、すぐに行った方がスリリングでいいのですが、発進に時間をかけた方がメカの魅力が伝わる。武器を選んだり、プールが開いたりとか、ずっとやってますからね(笑)。とにかく段取りを見せるのが馬鹿丁寧なんですよ。リズムとかじゃないわけ。スリルを見せるかメカを見せるか、秤にかけたとき、イギリス人はメカを取っちゃった(笑)。
作曲家のバリー・グレイがインタビューで話していたのですが、サンダーバードは、セリフがないから音楽をガンガン鳴らせて、メロディを中心に持って来れるんだと。普通のドラマだと、音楽とセリフがケンカするので、メロディーはそんなに表現できないけど、サンダーバードの場合はメカが発進するまでの間はセリフがない。だから発進準備でメカが動いているだけのところは、音楽で“持たせて”いるんですよね。いろんな要素がおかしな方向に(いい感じで)ドミノ倒しになって、この魅力になってる気がしますね。
Q:「ここぞ」という時に高揚感を煽る音楽は興奮しますし、のんびりしてるなとは全く思わせない。
樋口:そう。のんびりしてると思わせないんですよ。それを感じさせない。サンダーバード2号のコンテナ選びなんかは、回転寿司みたいになってて(笑)「今日のコンテナはどれにしようかな…?」みたいになるじゃないですか。「早くしろよ!」と思うんですけど(笑)。
『サンダーバード55/GOGO』Thunderbirds ™ and © ITC Entertainment Group Limited 1964, 1999 and 2021. Licensed by ITV Studios Limited. All rights reserved.
Q:コンテナ選びの楽しみは、確かにありますね。
樋口:僕らとしてはジェットモグラが好きだったので、それが入っているコンテナが通過すると「あぁ、今日はジェットモグラじゃないー!」って(笑)。ジェットモグラって、なぜこのメカにナンバーが付いてないんだろうという位、キャラクターとして立ってるんですよ。でもよくよく考えると、地面潜る以外にあんまり役に立たないんですけどね。
それで言ったら水陸両用の4号も謎なんです。しかも4号は2号無しではどこにも行けない。大きさ的にもちょっと小さかったりして、何だか4号は物足りない(苦笑)。
Q:一番人気があったのはやっぱり2号なんですかね。
樋口:2号らしいですね。働き者の日本人が選ぶのは2号だったという(笑)。