©Thomas Ash 2021
『牛久』トーマス・アッシュ監督 日本人の「病」をえぐり出す驚愕のドキュメンタリー【Director’s Interview Vol. 186】
入管問題は日本人が抱える「病」の「症状」
Q:日本政府がなぜ制度を変えず、難民の受け入れを拒み続けるのか明確な理由が判然としません。トーマス監督はどう捉えていますか。
トーマス:外国人に対する、日本人の理解度の低さが一つの理由ではないかと思います。例えば外国人が日本国籍を取得する、つまり帰化することはテレビタレントになるくらい特別なことだと思われています。日本で生まれ育った人には、日本に移民して、日本で普通に一生暮らすことがあまり考えられないようです。アメリカなら、アメリカに移民してアメリカ国籍をとって、そこで死ぬまで暮らすことは普通にあるのに。
私は20年以上日本に住んでいますが、いまだに「いつアメリカに帰るの?」と聞かれたりします。私がずっと日本にいるかもしれない、という発想がないみたいです。それが想定外になっているのは、根本的に外国人に対しての理解がない気がします。
例えばテレビで外国人と日本人が結婚していることをネタにして紹介する番組がありますが、とんでもないと思います。国際結婚ってそんなに面白いものではありませんから。「日本に何をしに来たの?」とか、「奥さんが外人」、「夫が外人」だとか。同じ人間なので、特別なことではない。日本の難民問題は、そういった外国人を特別視する意識が背景にあるように思います。日本人の外国人に対する意識は、ある種の「病」のようなもので、その「症状」として表面化したものが入管の問題だと思います。